ライフウェアは完成形に!+Jが可能にするユニクロ全方位戦略のすごさ

河合 拓
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企業経営は その時々で「解」が変わる!

企業経営は時代により、正しい解が変わる(taa22/istock
企業経営は時代により、正しい解が変わる(taa22/istock

 さて、私が普段は語らぬ「昔話」に時間をとったのには理由がある。それは、企業経営というものは、その時によって何が正しいのかという軸が変わってゆくということである。オンワード樫山とワールドの戦略を裏からリアルな体験をしながら支える立役者として仕事ができた経験、そして、その後、経営コンサルタントとして、ユニクロが従来の常識を次々と破る戦略で革新的な成長を遂げるさまを見てきた。私は、アパレル産業が持つ歴史の重みと深みを感じるのである。

  私はよく「本物の経営コンサルタントなら、文章など書く暇など無いだろう」と揶揄されることが多いのだが、私にはこうした歴史の真実を語り継ぐ責任があると思っている。なぜなら、今、アパレル業界は「言われっぱなし」で、アパレル側からの真実の声は何も聞こえないからだ。

  オンワード樫山は、百貨店依存率が非常に高く、それを今の視点で批判する人もいるが、当時、百貨店に事業集中することは正しい戦略だった。実際、同社は幾度も過去最高益を更新していた。

 また、ワールドの過剰な数字、データ重視による企画の弱体化を批判する人も多いが、当時は、市場、いわゆるDCブランドとよばれる領域は成長しており、そこに向けた欠品の撲滅とデータによる感覚経営の排除は、すくなくとも今のアパレルビジネスの経営管理に絶大な影響を与えた。ワールドの戦略は、当時、アパレルビジネスに多大な売上と利益を企業にたたき出す解法だったのである。

 しかし、東西両巨頭達は時代の流れには勝てなかった。バブル時代の終焉とともに百貨店は苦境に陥り、百貨店費率が極端に高かったオンワードは苦境に陥り、UNTITLEINDIVITakeo Kikuchiなど、30年前となんら変わらぬポートフォリオを承継し、時代に沿ったブランド開発ができなかったワールドも苦境に陥っている。ユニクロはこうした歴史的、そして競争環境背景(日本経済の弱体化、中国の台頭、デジタル技術の進化、世界競争)の中で生まれてきたのである。だから、今の部分だけを抜き取って、ユニクロだけを絶賛し、その他のアパレル企業を批判する態度からは何も生産的議論は生まれないし、それらは自ら改革を先導するという責任を放棄する評論家の態度である。すべての企業活動には、そこに至る必然性と歴史的な背景があるということである。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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