アパレル業界に迫るサステナブル対応 競合関係のワールドとTSIがコラボをする理由

2022/07/27 05:55
    小内三奈
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    全世界でSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが急速に進む中、アパレル業界で大きな課題となっているのが、余剰在庫とサステナブルファッションへの対応である。そんな中、大手アパレルメーカーのワールド(兵庫県/鈴木信輝社長)とTSI(東京都/下地毅社長)がタッグを組み、サステナブルファッションを打ち出した大規模コラボキャンペーンを実施した。競合関係にある2社が、なぜいま、手を取り合うことを決めたのか。コラボキャンペーンを通して消費者に何を伝えようとしたのか。キャンペーンを担当した、ワールドのグループ会社 フィールズインターナショナル 店舗営業部の荒川正敏部長と TSIの店舗開発部 3店舗開発課の青木拓也課長に話を聞いた。

    環境に配慮したサステナブル素材のファッションを知ってもらう

    フィールズインターナショナル
    フィールズインターナショナル 店舗営業部の荒川正敏部長

     「Together with Earth ~地球と一緒にいきていく」をテーマに、この春、全国の大丸松坂屋百貨店9館で初のコラボキャンペーンを開催したワールドとTSI

     キャンペーンの目的は、百貨店に足を運ぶ消費者にSDGsに対する両社の取り組みを知ってもらうことだ。各ブランドではすでに環境に配慮したサステナブル素材を使ったラインナップを取り揃えてはいるが、まだまだメーカー側の想いや取り組みを十分に消費者に伝えきれていないのが現状だ。

     ワールドのグループ会社 フィールズインターナショナル 店舗営業部の荒川正敏部長は「我々アパレルはもちろん、百貨店さまにとっても『SDGs』は最も関心が高いテーマ。このテーマに向けて2社で取り組むことで、お客さまにアプローチをしたかった」と話す。両社ともに、他社とのこのような取り組みは初だったという。

     今回のキャンペーンでは、各ブランドですでに販売しているサステナブル素材を使用した商品に焦点を当て、「Together with Earth」の共通オリジナルタグを付けてクローズアップし、サステナブルなファッションであることをPRした。

     サステナブルな素材とは、ペットボトルから作られた糸でできた素材や土に還る天然素材の生地など。そのほか生地に抗菌加工をすることで水洗いの回数を削減するなど、さまざまな工夫が施されている。

     ワールド側からは「アンタイトル」「インディヴィ」「リフレクト」など10ブランド、TSI側からは「ヒューマンウーマン」「ボッシュ」「アドーア」など11ブランドが参加し、サステナブル素材を使った2022年春夏シーズンの商品を打ち出した。

     消費者からの反響を尋ねると、「購入いただいたお客さまからは、SDGsに対応した商品を買ったことで自分もSDGsに参加できたという実感がある、という声を多くいただいた」と、TSI店舗開発部 3店舗開発課の青木拓也課長。ノベルティとして配った天然竹のカトラリーセットもテーマと合致していることから大変好評だったという。

     一方で、「漠然としていてよくわからない」という声や、「SDGs対応商品だから購入したわけでなく、買ったものがたまたま対象商品だっただけ」という声もあったのはたしかだ。「キャンペーンの意味をお客さまにもっともっと伝えることができるよう、今後はさらに伝え方を工夫していく必要があると考えている」(TSI 青木課長)

     日頃は競合関係にある2社が、今回初となるサステナブルキャンペーンで手を取り合った。その最大の成果について、青木課長は「TSI内でも、ワールド内でも、環境に配慮したサステナブル商品の展開をもっと強力に推し進めなければならないという考え方が格段に強くなったこと」だと言う。

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