ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?
海外ユニクロ事業が牽引して2023年8月期連結決算は過去最高の業績を達成し、24年8月期第1四半期も好調を継続したファーストリテイリングだが、値上げで大衆価格からの乖離が指摘される国内ユニクロ事業は客数減が深刻化している。グローバル制覇をもくろんで「低価格高品質な国民的カジュアル」から「高機能高品質なグローバルブランド」に変貌する「ユニクロ」は貧困化する日本の大衆を置き去りにしていくのだろうか。アパレル業界の重鎮、小島健輔氏が緊急解説する。
ビッグマック化する「ユニクロ」
コロナ明けのリベンジ消費に歴史的な円安も加わって外国人観光客が日本に殺到する中、国内の「ユニクロ」店舗も外国人観光客で賑わっている。
今や海外23カ国に展開する「ユニクロ」は母国にもある旅行者も多いはずで、わざわざ日本の「ユニクロ」で購入するのはどうしてなのかと訝っていたら、マクドナルドが外国人観光客に人気だというテレビ報道を見て腑に落ちた。
マクドナルドは世界のどこにもあるほどグローバル化しているが、各国の経済状況に応じて価格が相応に異なり、「ビッグマック指数」は消費者物価の国際比較にも使われる。日本のマクドナルドは世界でも突出して割安で、ビッグマックが24年1月24日から30円値上がりして480円になっても十分にお得だから、魅力的なローカルメニューも相まって外国人観光客に人気なのだという。
すっかりグローバル化した「ユニクロ」もマクドナルドと同様で、各国の経済状況や競争環境、関税や為替で価格が微妙に異なる。
日本でも近年の値上げで「低価格高品質な国民的カジュアル」から乖離しつつあるが、それでも「高機能高品質なグローバルブランド」として一格上のポジションにある欧米や中華圏より割安だから、自家用やおみやげに買い求める旅行客が多い。
23年8月期連結決算では海外ユニクロ事業売上が28.5%も伸びて9.9%の伸びにとどまった国内ユニクロ事業売上の1.6倍強となった。営業利益は2倍近く開いて営業利益率も海外15.8%、国内13.2%と格差が広がったから(良品計画の内外業績差ほど極端ではないが)、伸び悩む国内事業はお荷物になりかねない。
グローバルブランドのポジションへ国内ユニクロの価格もすり寄せたいのだろうが、「失われた30年」の経済停滞の果てにコロナ明けの世界的な消費回復に伴う混乱と円安によるインフレが重なって、12月で21ヶ月も連続して実質賃金が減少し23年通年で2.5%もの減少となった我が国では値上げに対する抵抗感が大きい。値上げすれば客数が減少する傾向が顕著に見られる。
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