ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?

小島健輔(小島ファッションマーケッティング代表)
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リベンジ消費とインフレの終焉という逆風

今後、グレーターチャイナのユニクロの売上、客数の動きに注目だ(Andy Feng/istock)
今後、グレーターチャイナのユニクロの売上、客数の動きに注目だ(Andy Feng/istock)

  30年ぶりというインフレと円安に直面して、その状況が続くと線形発想している事業者も多いだろう。だが時間差はあっても日本の経済循環が米国と異質な展開となるとは考え難いから、インフレもリベンジ消費も近々に終わると見るべきだ。

 貿易赤字は縮小したとしても海外投資で外貨流出は止まらないから円安基調は大きくは崩れないだろうが、インフレは沈静化してデフレに戻るリスクさえ考えられる。

 コロナ明けのリベンジ消費は、時差はあっても世界中で発生したものだから同様に終わり、それがもたらしたインフレも沈静化する。インバウンド(旅行消費)もリベンジ消費の一環だから、いずれ沈静化する。コロナ対策の膨大な財政支出や軍事支出で肥大した各国の国家債務もリバランスを迫られるから、デフレ圧力は世界で高まっていく。

 ましてや、すべてが国有の土地を民間資本に転換するという共産主義国家のタブーを犯して脅威の経済成長を遂げた中国も人口減少に転じて不動産投資が不良債権化し、かつての日本と近似したデフレスパイラルに転落したから、再び「低価格輸出攻勢」で世界にデフレを振り撒くことが危惧される。中国国民の所得も頭打ちになるから消費もダウンサイジングに流れ、かつて「爆買い」で名をはせた日本などでの旅行消費が戻ることもない。

 「ユニクロ」の中華圏価格ポジションは日本より一格高い。そのためダウンサイジングで日本国内のような客数減に陥り、ユニクロ事業海外売上の43.2%、営業利益の46.0%を占める(238月期)グレイターチャイナ事業も勢いを失っていくのではないか。欧米諸国の一部ではダウンサイジングが「ユニクロ」にとって追い風になるとしても、リベンジ消費とインフレの終焉は逆風になる。

 客数減でも値上げで売上を伸ばし、グローバル水準の報酬にして優秀人材を確保するというファーストリテイリングのもくろみは崩れ、成長の構図にも影を落とすかも知れない。それはインフレ政策を採る小売事業者に共通する環境変化であり、戦略の見直しが急がれる。

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