小売業界新たなフェーズへ!平和堂の株価上昇が意味することとは
春も進み、早くも3月期の決算シーズンが訪れました。前回はしまむらの株主総会における株主提案を取り上げました。5月17日に開催予定の総会のゆくえはやはり気になります。仮に株主提案が承認される場合、それは株主がストックされた現預金と毎年のフローで稼ぐ現金の使い道についてインフレのもとで鋭敏になったことの証左になります。仮に否認されても、こうした現金の持ち方は毎年株主に厳しく監視される、そのきっかけになるでしょう。今回は平和堂の株価上昇の理由とその影響について考えたいと思います。
4月、平和堂の株価が急上昇
さて、4月の株価の推移も大変興味深い内容になりました。
主要小売企業の2024年4月における月間株価騰落率上位10社は以下の通りです。
社名 | 月間騰落率 | PBR(株価純資産倍率) |
(株)ビッグカメラ | 20% | 1.88 |
(株)平和堂 | 19% | 0.69 |
日本KFCホールディングス(株) | 14% | 4.06 |
(株)ケーズホールディングス | 13% | 0.96 |
(株)ノジマ | 11% | 1.10 |
(株)コメリ | 10% | 0.77 |
上新電機(株) | 10% | 0.67 |
(株)エービーシー・マート | 9% | 2.31 |
(株)マミーマート | 9% | 1.54 |
アークランズ(株) | 8% | 1.02 |
+10%を超える上昇を示す企業が7社もあり、その顔ぶれも家電量販、総合小売、ホームセンターなどの業態に集中していることがわかります。また、株主にとって企業解散の目処となるPBR(株価純資産倍率)が1を下回っている銘柄が4社あることも注目点です。
このなかで筆者が特に注目したのは平和堂の株価上昇です。
同社は堅実な経営ながら資本効率が低く、PBRが1を大幅に下回っていました。ところが同社は4月4日の決算発表に合わせて「資本コストや株価を意識した 経営の実現に向けた対応について」を発表し、これが株価の上昇をもたらしたと考えられます。
その骨子は、「売上高当期純利益率を従来の1.4%〜2.4%の水準から3.2%まで引き上げ、この結果ROEを従来の3.7%〜6.1%の水準から2030年に8.0%を目指す」というものです。ハードルは低いとは思いませんが、意欲的な計画であることが高く評価されたのでしょう。
椎名則夫の株式市場縦横無尽 の新着記事
-
2025/03/10
西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは -
2025/01/10
24年もっとも上昇/下落した小売株上位20!25年の小売株、4つの注目点とは -
2024/12/16
VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由 -
2024/09/24
クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは -
2024/08/19
円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは -
2024/07/08
アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは
この連載の一覧はこちら [63記事]

イオン・グループ,ツルハの記事ランキング
- 2025-03-10西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは
- 2024-05-02イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは?
- 2023-08-04どうなる「ツルハ」と「クスリのアオキ」 イオンの出資先で問われるガバナンスと再編の予兆
- 2024-09-3048兆円市場の各社のシェアがわかる!食品小売、市場規模&占有率2024!
- 2024-07-10イオンVSセブン&アイ 株主優待が示す2社の「大きな差」とは
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長
- 2023-04-26スーパーマーケットの次世代顧客は「ヤングファミリー」か、「MZ世代」か
- 2024-09-26上位10社でシェア8割!ドラッグストア市場規模&市場占有率2024
- 2019-04-22イオンと資本業務提携したフジが トップバリュと距離を置く理由
- 2020-10-01イオン、PBトップバリュで植物由来食品「ベジティブ」シリーズを本格展開
関連記事ランキング
- 2025-03-10西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは
- 2024-05-02イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは?
- 2023-08-04どうなる「ツルハ」と「クスリのアオキ」 イオンの出資先で問われるガバナンスと再編の予兆
- 2025-02-26業態別 主要店舗月次実績=2025年1月度
- 2024-09-3048兆円市場の各社のシェアがわかる!食品小売、市場規模&占有率2024!
- 2025-02-189号店で初の新店、生鮮徹底強化、キリン堂のフード&ドラッグ!
- 2024-07-10イオンVSセブン&アイ 株主優待が示す2社の「大きな差」とは
- 2022-08-03激化する“調剤争奪戦”、アインホールディングスの成長戦略は?
- 2022-09-15東進続けるコスモス、迎え撃つクスリのアオキ、熾烈なフード&ドラッグ競争の最終的な勝者は?
- 2023-02-22コスモス、クスリのアオキ…勝ちパターンで高速出店するフード&ドラッグの強さと死角とは
関連キーワードの記事を探す
9号店で初の新店、生鮮徹底強化、キリン堂のフード&ドラッグ!
ドラッグストア業界のDXの現況は?後編 「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始
ドラッグストア業界のDXの現況は?前編 注目技術のトップは生成AI