新・北海道現象の深層④ ツルハには敢えて挑まず…アインとサツドラ、「ナンバー2企業」たちの流儀

2019/07/19 05:06
浜中淳(北海道新聞)

北海道現象から20年。経済疲弊の地で、いまなお革新的なチェーンストアがどんどん生まれ、成長を続けている。その理由を追うとともに、新たな北海道発の流通の旗手たちに迫る連載、題して「新・北海道現象の深層」。第4回は、ドラッグストア業界に焦点をあてる。ツルハホールディングスはなぜ圧倒的な規模拡大を実現できたのか、そして1強が北海道市場を制覇していたにも関わらず、アインホールディングスとサツドラホールディングスの2社は、成長、そして飛躍のステージへと進むことができたのだろうか?

 

ドラッグストアの「王道」歩む、盤石のツルハ

ツルハHDがローソンと共同出店した「ローソンツルハドラッグ杉並和田店」(東京都杉並区)。ツルハの関東圏のグループ店舗は400店を超え、北海道の企業と意識する消費者はもはやほとんどいないだろう
ツルハHDがローソンと共同出店した「ローソンツルハドラッグ杉並和田店」(東京都杉並区)。ツルハの関東圏のグループ店舗は400店を超え、北海道の企業と意識する消費者はもはやほとんどいないだろう

 余裕のコメントといったところでしょう。ツルハホールディングスが2019年5月期連結決算で売上高7824億円と過去最高を更新し、初めてドラッグストア業界首位に立ちました。決算発表の記者会見で感想を問われた鶴羽順専務が「素直にうれしい部分はあるが、まあ一時的なことと理解しております」と涼しい顔を見せていたのが印象的でした。

 北海道に登記上の本店を置く小売企業で、「業界最大手」(業態別売上高トップ)の座に就くのは、家具・インテリアのニトリホールディングス、調剤薬局のアインホールディングスに次いで3社目。ホーマック(現・DCMホーマック)と本州2社の統合で誕生したホームセンターのDCMホールディングスを含め、小売4業態の国内トップを道産子企業が占めたことになります。

 ドラッグストア業界では現在、ココカラファインを軸にした有力企業間の再編話が浮上しており、ツルハHDの首位が「一時的なこと」との言葉に謙遜はないでしょう。同時に、売上高ランキングの変動に一喜一憂する必要のない磐石な経営への自信もうかがえます。

 ツルハは「ドラッグストアの王道」を歩んできた企業と言えるでしょう。もとは旭川で代々続く個人経営の薬局でしたが、1962年、当時大学生だった鶴羽樹会長が下宿先の大阪で見つけたセルフ方式の薬局をヒントに「ドラッグストア」という新業態の可能性を追求し始めました。

 札幌に進出し「クスリのツルハ」の名が知られ始めた85年、同社は50店に達したばかりの店舗数をいきなり1000店に引き上げる目標を打ち上げました。当時、社外はもちろん、社員ですら本気にせず、ただの「大言壮語」と受け取られたようです。

 しかし「北海道現象」の名付け親である鈴木孝之・プリモリサーチジャパン代表は、このような構想の大きさこそ、成功している北海道発小売企業の共通点と指摘しています。

 連載の1回目で述べたように、広大で人口密度の低い北海道は本来、小売業に向かない市場です。「他の地域の企業は一つのエリアを制してから、外の市場に目を向けるが、北海道の経営者は初めから外を意識した経営をせざるを得ない。肥沃ではない北海道市場にとどまっていては、成長が止まってしまう危機感があるからです」(鈴木氏)

 これはオランダから、フィリップス、ロイヤルダッチ・シェル、ING、KLMなど数々の世界的企業が生まれてきた構図と酷似しています。オランダは北海道のほぼ半分の面積に、わずか1500万人の人口しかいない小国です。これらの企業は英国、フランス、ドイツなど周辺の大国に打って出ることを最初から意識し、大企業に育っていきました。

規模拡大で得られた、“高粗利”というご利益

「ツルハグループ」の看板を掲げて営業する「くすりの福太郎」の店舗(東京都渋谷区)。首都圏に根を張り、調剤部門のレベルも高い同社を子会社化したことが、ツルハホールディングスを「国内トップ」の座に近づけた
「ツルハグループ」の看板を掲げて営業する「くすりの福太郎」の店舗(東京都渋谷区)。首都圏に根を張り、調剤部門のレベルも高い同社を子会社化したことが、ツルハホールディングスを「国内トップ」の座に近づけた

 ツルハが掲げた1000店という数字にも単なる「大きな目標」以上の意味合いがありました。「メーカーとの価格交渉力を付け、質の高いプライベートブランド(PB)をつくるために必要な規模」という意識です。事実、07年にくすりの福太郎(千葉県鎌ケ谷市)を買収し、グループ店舗数が700店規模に近付いたあたりから、ツルハのPBの商品力は飛躍的に高まっていきました。

 それ以前のツルハは、生活用品の価格を下げて集客力を高め、粗利の高い医薬品で稼いでいましたが、医薬品の価格自体は決して安くなかった。それが2000年代半ばごろには、ツルハでナショナルブランド(NB)の医薬品を買い求めようとすると、薬剤師から同じ効能で価格の安いPBを勧められることが増えました。特定のNBによほどの思い入れがない限り、お客は喜んで安価なPBを選びます。ツルハにとってもPBの方がNB以上に粗利を取れるのです。こうして顧客とWIN-WINの関係ができれば、あとは加速度的に競争力が高まる一方です。

 12年に目標の1000店を達成したツルハHDは、杏林堂薬局(浜松市)などの買収を経て18年には店舗数を2000店台に載せました。創業時から現金商売を基本とし、財務基盤の強固なツルハHDはM&A(合併・買収)でも優位な立場にあり、今後も業界トップを争い続けていくことは間違いないでしょう。

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ドラッグストアとも百貨店とも競合しないアインズ&トルぺ

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