#4 ツルハには敢えて挑まず…アインとサツドラ、「ナンバー2企業」たちの流儀

北海道新聞:浜中 淳
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脱・競争で勝ち上がったアインホールディングス

2003年に出店し、現在も同じ場所で営業を続ける「アインズ&トルペ原宿クエスト店」(東京都渋谷区)。アインホールディングスは、資生堂から化粧品ブランド「アユーラ」を買収し、化粧品・雑貨PB「リップス&ヒップス」を開発するなど、商品力を一段と強化している
2003年に出店し、現在も同じ場所で営業を続ける「アインズ&トルペ原宿クエスト店」(東京都渋谷区)。アインホールディングスは、資生堂から化粧品ブランド「アユーラ」を買収し、化粧品・雑貨PB「リップス&ヒップス」を開発するなど、商品力を一段と強化している

 ところで、「北海道現象」とは、不況が厳しくなるほどトップ企業が同業態の2番手以下の企業から客を奪っていく「独り勝ち現象」である-と連載1回目で説明しました。それでは、2番手以下の企業が生き残るには、どのような企業行動を取るべきなのでしょうか。その具体例を示したのがアインHDです。

 先に述べたように、ツルハHDはナンバーワンにふさわしく「ドラッグストアの王道」を行く企業です。住宅街や郊外に広めの店を構え、PBを中心に安くて商品力の高い医薬品と日用品、加工食品を豊富に取り揃えているのが特徴です。

 アインHDは調剤薬局の国内トップ企業ですが、ことドラッグストア事業に関しては「ナンバーツーの流儀」に徹してきました。それは「ツルハとは戦わない」という戦略です。ツルハが出店しない都会の繁華街に的を絞った業態-。それが02年10月、札幌・大通の地下街に出店した「アインズ&トルペ」の1号店でした。

 アインズ&トルペは医薬品も扱ってはいますが、中核を占めるのは化粧品と雑貨です。化粧品は従来、百貨店ブランドと大衆ブランドが明確に分かれていましたが、アインズ&トルペは、その中間の「準百貨店ブランド」と言うべき位置づけであり、おしゃれで値ごろ感のある商品群が若い女性たちに支持されるようになっていきます。

 03年には東京・原宿に進出。一見難しそうに見える出店地ですが、大谷喜一社長は「他社と競争しない済む場所を選んだ結果だった」と言います。確かに周囲を見ても、競合しそうな店舗は存在しません。

 かつてのドラッグストアと言えば、商品を歩道にはみ出して陳列する粗野なイメージが強く、ファッショナブルな原宿のテナントビルからは敬遠されるケースが多かったそうです。その点、王道ドラッグストアと競争しないことを意図してコンセプトが組み立てられたアインズ&トルペは、店舗の外装や包装用紙袋のデザインが凝っていて、高級ブランドのショップと並んでも違和感がありません。

 アインズ&トルペの出店を始めたころ、見学に来たドラッグストア業界の関係者が「これは化粧品店だ」と言い、百貨店の化粧品担当者は「面白いドラッグストアですね」と言った。「どちらにも競争相手と見なされていないと分かった時、成功を確信した」。大谷社長はそう振り返っています。

 今やアインズ&トルペは、唯一無二の「化粧品のセレクトショップ」と若者らに認識され、都市部の百貨店、テナントビル、ホテルなどから引く手あまたの状態です。銀座、新宿、八重洲、渋谷など都心の超一等地に次々と進出する原点は「脱・競争」にありました。


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第3のドラッグストア企業、サツドラが見つけた金城湯地

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