#4 ツルハには敢えて挑まず…アインとサツドラ、「ナンバー2企業」たちの流儀
第3の企業、サツドラが見つけた金城湯池
こうして郊外がツルハ、都市部がアインという棲み分けが出来上がった中で、試行錯誤を強いられたのが、北海道第3の企業、サツドラホールディングスでした。一時は食品の品ぞろえを拡充し、バラエティストアのような方向性に進んだものの、うまくいきません。
そのサツドラは2010年代に入り、ついに金城湯池を見つけます。12年末に発足した第2次安倍政権が実施したビザ緩和によって爆発的に増えたインバウンド向けの店舗です。
中国人観光客が、安くて上質な日本製の医薬品や化粧品、健康食品を買い求めるため、ドラッグストアに行列をつくることは以前からよく知られていました。これに狙いを定め、免税対応、日英中3か国語の商品表示、中国語を話せるスタッフ常駐、Wi-Fi完備-といった機能を備えた店を、15年から、道内の観光地や温泉街、空港など訪日客の集まりやすい場所に出店し始めたのです。
そして、インバウンド需要に狙いを徹することで、以前は考えられなかった道外進出のチャンスを得ます。16年1月の道外1号店として沖縄県豊見城市のショッピングモールに進出、同年11月には上野アメ横付近に東京1号店を出しました。昨年には京都・清水寺付近にも出店するなど、道外の店は二けたを数えるまでになっています。
「独り勝ち」から変わってきたのが新・北海道現象
過酷な北海道市場ではたった一つの経営判断の誤りが、致命傷になりかねません。例えばアインHDには、かつてホームセンターや家電量販に進出し、失敗した苦い経験がありました。これらの負債を整理し、再出発しようとしたまさにその時、北海道拓殖銀行が破綻し、一時は、文字通り生死をさまよう状態にまで追い込まれたのです。
その後、アインやサツドラが、それぞれの個性を磨き、ツルハと顧客が重ならない工夫を続けてきたのは、肥沃ではない北海道市場でナンバーワン企業に無謀な競争を挑み、消耗する恐ろしさを経営者たちがよく自覚しているからでしょう。
面白いのは、そうして各々が個性を際立たせてきた結果、今では首都・東京で、北海道のドラッグストア3社がそろい踏みを果たしているという事実です。「北海道現象」から20年。その影響が全国に及ぶ中で、当時の「独り勝ち現象」とは異なる新たな潮流が見え始めています。