激化する“調剤争奪戦”、アインホールディングスの成長戦略は?

棚橋 慶次
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アインホールディングス(北海道/大谷喜一社長)が6月3日に公表した2022年4月期連結決算は、売上高が対前期比 6.4%増/前期から189億円増の3162億円、営業利益が同38.5%増/同42億円増の151億円、当期純利益が同5.9%増/同3億円増の70億円だった。
アインホールディングスの売上高は右肩上がりのトレンドが続いている。一方、営業利益については、持ち直しの傾向はみられるものの過去最高だった2018年4月期(196億円)には届いていない。

主力のファーマシー事業が好調!

 アインホールディングスの創業は1969年、札幌市を拠点として全国に調剤薬局・ドラッグストアを展開しており、関連してジェネリック医薬品卸や化粧品販売なども手掛けている。

 事業セグメントは、以下の通り。

ファーマシー事業

 「アイン薬局」を核とした調剤薬局1000店舗強を運営する。調剤薬局では、医師・病院が患者に出した処方箋をもとにETC(医療用医薬品:処方薬)を提供するとともに、服薬回数や飲み合わせに関する指導も行う。

 従来は病院が担っていた処方薬提供機能を外部に委託する「医薬分業」が1990年代より急速に進み、受け皿となった薬局チェーンやドラッグストアには大きなビジネスチャンスとなった。

 このほか同事業では、ジェネリック医薬品の卸販売、医療従事者の人材派遣や医療事業者への経営コンサルティングも展開している。

 ファーマシー事業はアインホールディングスのコア事業であり、同グループ売上高の実に9割を占める。調剤薬局を展開している上場企業の中で、売上は日本調剤(東京都/三津原庸介社長)とトップの座を競い合っており、収益性も業界トップクラスだ。

リテール事業

 ドラッグストア「アインズ&トルペ」約80店舗を全国に展開、化粧品・医薬品を中心に販売している。同社はコスメ関連商品に力を入れることで競合との差別化を図っており、売り上げ構成比は全体の9割近くに達する。

その他事業

 独自ブランドによる化粧品の製造・販売事業などを展開している。

 22年4月期決算では、ファーマシー事業は既存店売上高が対前期比3.1%増(処方箋取扱枚数1.9%増、単価1.1%増)と伸長したことに加え、M&A(合併・買収)を含む約50店の新規開業効果もあり、売上高は同7.6%増で着地した。

 リテール事業も、新型コロナウイルス完成状況の緩和もあって既存店売上高が戻ってきたこと(同4.1%、※同条件で比較するため収益認識に関する会計基準適用前の数値で比較)に加え、出店効果もあって売上高は同5.9%増と増収だった。

 セグメント別の営業利益を見ると、主力のファーマシー事業は同8.9%増の243億円と増益。18年3月期(219億円)を超え過去最高を更新した。収益性を示す売上高営業利益率も8.6%と、18年3月期に匹敵する水準となっている。

 一方でリテール事業は18億円の営業損失を計上。前期から赤字幅は減らしたものの、2期連続で赤字が続いた。

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