ツルハホールディングスの店舗網が40都道府県に拡大 新社長の鶴羽順氏は何を語ったか?

小木田泰弘(『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌副編集長)
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ツルハホールディングス(北海道:以下、ツルハHD)では、堀川政司氏の退任にともない、20年6月2日付で専務執行役員の鶴羽順氏が社長に就任した。地域を支え、地域とともに成長するドラッグストア(DgS)チェーン企業として、2024年5月期のグループ店舗3000店舗、売上高1兆円の中期目標達成に向けて、新たなスタートを切った。

6月2日付けで社長に就任した鶴羽順氏
6月2日付けで社長に就任した鶴羽順氏

 インバウンド売上消失も増収増益を達成

 ツルハHD20205月期(連結)業績は、売上高は対前期比7.5%増の8410億円、営業利益は同7.6%増の450億円、経常利益は同6.9%増の462億円、当期利益は同12.4%増の278億円となった。

 205月期は、台風19号、21号などの自然災害、10月には消費税増税、新型コロナウイルス感染拡大など、外部環境が大きく変化した1年だった。とくに新型コロナウイルスの影響では、マスク、消毒剤、予防関連商材、緊急事態宣言後の巣ごもり需要による食品や日用雑貨の販売拡大というプラス面があったが、インバウンド売上がほぼ消失。外出自粛による化粧品や季節品の不振も響いた。622日現在、インバウンド対応の9店舗を閉店、7店舗を一時休業、96店舗で営業時間短縮を実施している。また、厳しい新型コロナウイルスの影響下で働く従業員の労に報いるため、特別感謝金30億円を支給した。

 結果的には、プラス面がマイナス面を上回り増収増益を達成。堅調な決算結果になった。

 新規出店131店舗(子会社化2社含む)はほぼ計画どおり。閉店は計画を12店舗上回る63店舗(スクラップ&ビルド含む)、期末店舗数は2150店舗となった。

 既存店売上高については、期初に前年同期比0.8%増を計画していたが、消費増税による駆け込み需要、新型コロナウイルスの予防関連商材需要、4月以降の巣ごもり需要もあり、同4.2%増で着地した。客数は同3.3%増、客単価は同0.8%増、買上点数は同1.4%増となった。とくに新型コロナウイルスの影響を受けた第4四半期は同7.1%増と押し上げ効果が大きかった。

 地域別、事業会社別では、すべての地域、全事業会社で既存店売上高が前年実績を上回った。インバウンド売上の影響が大きい大阪府の店舗で伸びが小さくなったが(中部・関西地区の既存店は同1.3%増)、精肉・青果を品揃えに加えたツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本が同8.2%と大きく伸びた。

 調剤は売上高、粗利益ともに計画をクリアした。1910月の薬価改定、204月の調剤報酬改定に加え、新型コロナウイルスの影響による処方せん枚数の減少、処方せん単価の上昇などがあったが、調剤報酬は同11.6%増の855億円になった。調剤併設店舗では処方せん枚数の減少が比較的穏やかだったこと、調剤取扱店舗数の増加(57店舗)、調剤ロボットや在庫自動転送システムによる患者の利便性向上策もプラスに働いた。

 日用雑貨、食品も新型コロナによるプラスの影響で、それぞれ大きく伸びた。一方、一般用医薬品(OTC)は花粉症薬、季節商材が計画値を下回り、化粧品はインバウンドの減少により前年実績をクリアできなかった。

 195月期にリニューアルした、新プライベートブランド(PB)「くらしリズム」の導入を積極的に行い、当初目標の500SKU(期末503SKU)を達成した。PB売上高は同8.4%増、粗利益率は1.1ポイント改善の46.4%になった。

――20年5月28日付で、JR九州ドラッグイレブン(福岡県大野城市)を子会社化した。

鶴羽社長 同社は当社グループの出店が薄い九州を基盤に206店舗を展開。23店舗で調剤を行っている。同社の子会社化により、当社グループの出店地域は40都道府県に拡大した。6月末から、共同仕入れや出店コストの低減など、統合シナジーを最大化するべくスケジュールづくりを進めていく計画だ。統合効果の具体的な見込みについては、次回以降の決算発表の場で明らかにしていく。

 

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