第87回 SC運営でありがちな「抽象的なキーワード」を具体的なKPIに落とし込む方法
ショッピングセンター(SC)の運営管理担当との会話では「MD(商品政策)の構築」「顧客の囲い込み強化」「施設のバリューアップ」「接客力の向上」「リアル価値の創造」「コミュニケーションの重視」「差別化」などのキーワードが登場する。だが、残念ながらそこにはKPIとなる指標や具体的な根拠は見えない。今回は、そんなSC運営でありがちな「抽象的なキーワード」を具体的なKPIに落とし込む方法について解説したい。
SC運営管理者の陥る「罠」
冒頭に記した各キーワードには目標とする数値は登場しない。
MD構築とはどのような状態が最適なのか(そもそもSCは商品を扱わないのでMDなど無いはずだが)、リアル価値の創造とは何を目標とし、その結果をどのように評価するのか、コミュニケーションの強化が達成された姿とはどのような姿なのか、それを誰がどうやって評価するのか、全く分からない。
しかし、SCの運営現場では、日々、このようなキーワードが飛び交い、社内の会議体でもこれらキーワードが登場する。
では、なぜ、このような観念的、抽象的な会話でSCの運営管理業務が行われるのか。
その理由は2つある。1つ目は、SCの営業成績が運営管理の業務品質による影響が少ないことに起因する。
店舗巡回、販促、コミュニケーション業務は否定されるものではないし、これら業務により統一的運営が実現することは間違いない。ただ、営業成績へのインパクトは、それらの業務より天候やテナントの入れ替わりや消費増税などの環境変化や株価上昇による資産効果(ラチェット効果)など経済環境の変化による影響が大きく、運営管理業務における数値目標が立てにくいことにある。
2つめの理由は、SCを小売業的発想で管理することに起因する。
SCは不動産業であるため、本来のKPIは、賃料であり、キャッシュフローであり、資産価値であり、利回りであるはずだ。だが、テナントの売上をあたかも自らの売上であるように捉えるため効果測定の困難な販促や情緒的なコミュニケーション活動が主軸となる。
小売業であれば、損益計算書上の収入は売上高であり、その売上高の前年比が成長性を評価する。しかし、SCでは、テナントの売上が上がっても必ずしも賃料が上がるとは限らない。固定賃料の店舗であればSCの収入に対するテナント売上の感応度はゼロである。
では、どのように考えれば良いのか。
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