「時代遅れ」を感じた小売業が実践すべき「出島戦略」とは?
あるアパレルが、全社を揚げて日本から中国までの物流を一気通貫するサプライチェーンマネジメント(SCM)を構築しようとしていた。しかし、プロジェクトは日々混乱を極め、結局は途中で頓挫した。
担当者に話を聞くと、「中国の工場が非協力的で、我々が要求する『小ロット』と『生産納期』が守れない」のが理由だという。しかし、工場側の担当者に聞いてみると、問題があるのはアパレルの方で、「杜撰な仕様書、曖昧な指示と無駄な仕様変更、さらに、発注ミスした在庫を隠蔽するため圧力をかけ、値段を調整させたり余った原料を強制的に返品させたりと、現場で無茶ばかりやっている。もう、これ以上おつきあいは勘弁したい」ということだった。当然、トップは何も知らないし、「中国とのビジネスは難しい」という報告だけ受け、頭を抱えるわけだ。
「もっと仕入先を大事にしろ」
最近では、トップからこんな指令が現場にいくようになった。しかし、実態はさらにお粗末で、「最近やたらとペコペコしはじめたが、実際のビジネスの交渉では、なんら付加価値の高いやりとりはない」という状況になっている。
今回は、アパレルの事業再生のボトルネックととなる「見えない現場」についてその具体的事例と解決策を提示するとともに、小売各社が躍起になっているプライベートブランド(PB)戦略で成功するための本質を提供したい。
事業構造を変えられない、新しいアイディアがでない理由は組織にある!
「アパレル業界の事業構造は5年おきに変化しているのに、われわれの仕事は20年前から一切変わっていない」「だから、新規ブランドを投入し、心機一転、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)を組んでも、昔のブランドと同じ見え方になってしまう。これでは、新ブランドを導入した意味がない」 あるアパレル経営者の言葉だ。
“マンションメーカー”の頃には元気だったアパレルが事業を拡大。組織が肥大化し、管理が複雑になるにつれ業績が悪化するというのが典型的なパターンである。肥大化した企業では、数多くの部署や人間の間で綱引きが行われ、新しいものが生まれない。結局、「過去の成功体験」にしがみつき、合議制の名の下に、「こうすべきだ」という議論よりも「こうしてはいけない」という消去法的議論が主流となる。
結果、ブランドそのものの見直しが必要なのに、戦略や肝心の商品は、既存コンセプトの焼き直しという単なる改善策しか出てこない。
衰退しているアパレルほど、「ここがダメだ」など、消去法の議論が続き、最後は多数決か、現場を見ていない人間の鶴の一声で方向性が決まってしまう。
これに対し、成長著しいアパレルの現場に行くと正反対のことが起きている。議論は常に「べき論」が主流だ。「これがいい」「いや、こうすべきだ」など、活発に新しい案が飛び出してくる。誰も過去のことは言わない。トップは、ロジックだけチェックし、最も筋がよいものを選ぶだけだ。
「過去をいくら分析しても、売れる商品の顔は見えない。未来を読まなければならない」とは、誰もが心に感じているのだが、どうしてもそれができない。
実はその解決策は意外なところにある。
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