やりがちな「スキル採用」で会社がめちゃくちゃになる理由と正しい採用戦略とは

河合 拓 (代表)
Pocket

今回のテーマは採用戦略である。優秀な人材の取り合いとなり、採用難の時代ではあるが、今ほど明確な「採用戦略」が重要なときはない。採用戦略なくして企業はもはや成長できない。どのように採用戦略を考え、どういう人材を採用していくべきか、具体的な要諦をまとめた。

Hiraman/istock
Hiraman/istock

「私の会社は独特なので」は
採用戦略がない企業の言い訳

 中途採用市場が活況だ。コンサルタントのようなプロフェッショナル職種は、プロ野球選手と同様に年俸制で、一般サラリーマンがもらえないような報酬をもらう代わりに、簡単にクビになることもある。私が経験した極端なケースをいうと、まだマネージャだったころプロジェクトが始まる前に「上司とのプロジェクトの心構え面談」を行ったが、半年後には、「上司」と「部下」が入れ替わり、私は出世し、その人の「上司」となって、逆にその人の評価をしなければならなくなった。この面談は、日本企業で約10年の経験がある私にとっては違和感があり、とてもやりにくいものだった。だが、このように上司と部下が激しく入れ替わるのが「プロの世界」なのだ。

 しかし、こうしたケースは希としても、アパレル企業や繊維商社のような一般事業会社では一度役職が付くと昇格(プロモート)することはあっても、降格(デモート)することはあり得ない。だから、上司は部下を呼び捨てにするか、あるいは「河合くん」という具合に「上から目線言葉」の「くん」をつけるのである。これに対して、プロの世界は一年目の新人から社長まで「さん」づけが当たり前だ。逆に役職名で「部長」というふうに呼ぶのはありえない。人材の移り変わりが激しいがゆえ、逆に失礼にあたることもあるからだ。

 今回、私が「採用戦略」をテーマに論考を書こうと考えたのは、日本の事業会社では、新卒一括採用が主たる方法で、昨今中途採用が増えているとはいえ、成功しているという話は、ファーストリテイリングのような企業以外、ほとんどないからだ

 うまくいかない理由は、多くの企業が大企業病にかかってしまっているからだ。柔軟性やイノベーションが「昔のやりかた」「昔のしきたり」によって阻害され、それに気付かず時代の方が早く先に進んでしまっているのだ。したがって、まずは企業戦略としてどのように採用を行い、人材を教育するかについて、そのポイントをしっかり理解する必要がある。

 「いやいや、私の会社は独特で、中途採用を今まで何人もいれたがうまくいったためしがない」という声が聞こえてきそうだ。

 実は、「私の会社は独特だ」と言っている企業に共通することとして、しっかりした採用戦略を持っていないことが挙げられる。独特なのではなく、戦略がないから採用がうまくいかない言い訳にしているだけだ。

 一方、逆の例もある。私が知っているある会社では10年以上前、売上の天井を破れずにいた。そこで中途採用を増やし、新卒採用と人数を逆転させたのだが、そのときから、再び成長軌道にのり、年率10%以上の成長を遂げている。

 これは一体どういうことなのだろうか。本日は、こうした人材に関するインサイトをご提供したい。

 

1 2 3 4

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態