半分以上のビジネスパーソンが勘違い!キャッシュフローと運転資本を正しく理解する方法

河合 拓 (代表)
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損益計算書しか読めない人が多すぎる
もっとも大事な指標はキャッシュフロー計算書

Aajan/istock
Aajan/istock

ビジネスパーソンの中には「損益計算書」(PL)は読めるが「貸借対照表」(BS)はサッパリという人が多い。また、「キャッシュフロー計算書」(CF)ともなると「見たこともない」というのが本音だろう。しかし、会社を経営していく上で最も大事な指標は「資金繰り」と呼ばれる「お金の出入」で、これを本格的にまとめたのがキャッシュフロー計算書である。

資金繰りに困っていない会社は、財務部や経営陣がしっかりしていて無理な投資を抑制する機能やKPIがあるものだ。だから、一介のビジネスパーソンは財務諸表が読めなくても、ただ売上を求めればよいのである。

しかし、日本の97%を占める中小企業は事情が違う。売上5億円〜10億円程度の規模の会社になると、社長でも営業利益と経常利益の違いをわかっていないことが普通だ。私があるビジネス系メディアのコンサルティングに入った時、同社の取締役が「貸借対照表」も「キャッシュフロー計算書」まったく読めないどころか、財務の基本知識さえないのに驚いた。彼らの取締役会の議事録をみせてもらっても、彼らの従業員にたいする声を見ても、「根性論」の域を出ず、まさに「目をつぶって高速道路を走っている状態」だった。企業にとってキャッシュフローはもっとも大事な指標であり、キャッシュフローがよめなければ黒字でも倒産してしまうことがある。今日は、私がコンサルティングをしていく中で最もビジネスパーソンが苦手で勘違いをしている、キャッシュフローと運転資本(ワーキングキャピタル)についてできるだけ優しく解説してゆきたい。

運転資本」がマイナスのとき、どうすればよいのか?

キャッシュフローや運転資本を正しく理解するためには、あなたが給与をもらい貯金をする、あるいは散在をするなどをアナロジーとして理解するのがもっとも早い。例えば、あなたの給与が額面で毎月40万円、手取りで30万円だとしよう。この時、あなたが生活するのに必要な家賃、食費、光熱費、各種サブスク費などの総額が毎月合計20万円だったとする。これは、生活してゆくための必要最小限のお金だ。企業でいえば、ものを仕入れたり、従業員に給与を払ったりという特段何も新しいことをしないで、今ある事業をそのまま継続してゆくために必要な資金のことで、これを「運転資本」という

問題は、この「運転資本」がマイナス、つまり、30万円の手取りで35万円の生活をしている場合だ。

こういう人を会社と見立てると、取り得る打ち手は大きく4通りある。①一つは、給与=売上を増やす。②もうひとつは、お金を借りてしのぐ。③次に、お金を投資してもらう。投資してもらえば、経営権はとられるがお金は返さなくても良い。④最後に、生活を見直して毎月の支出を30万円以下、たとえば、25万円にする、である。(現預金を取り崩すという発想はここでは使わないことにしたい)

欧州の一流大学院のビジネススクールをでたコンサルが、③を選択して、私に出資を頼んできたことがあって呆れかえった。自分の会社の株を渡すから金を投資してくれというのだ。これが、いかに馬鹿げた発想か、みなさんはお分かりだろうか?おそらく、半分以上の読者は分かっていないのではないかと思う。

なぜ、これが問題なのか?

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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