ピンチの登録販売者、その「組織」と「個人」

玉田慎二(医薬コラムニスト/ジャーナリスト)
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登録販売者(登販)を巡る“影”=「不要論」について連載してきたが、最終回は登販にまつわる「組織」と「個人」について考えてみたい。組織に関しては「職能団体」が焦点となり、個人に対してはその「職能」にスポットがあたる。
本稿は全6回からなる短期集中連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」の最終回(第6回)です。

gorodenkoff/iStock

登販の統一団体が職能団体として機能するには

 まずは「組織論」から。連載第5回でも触れた通り、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)と連携する日本医薬品登録販売者協会(日登協)は、薬種商から引き継いだ全日本医薬品登録販売者協会との合併をめざしている。登販の職能団体としては、統一化は避けられない。組織のプレゼンスを一段引き上げるだけでなく、対外的に強くモノが言える。

 なおかつ、職能団体として確立するには、登販の資格者が組織のトップに就くことも必要だ。登販のトップ起用に関しては、幹部に対しても当てはまる。一方、現場で働く登販が組織を担うとなれば、微妙な問題も孕んでくる。例えば日登協に所属する5万人超の登販は、ほとんどがJACDS加盟のドラッグストア(DgS)企業に勤務し、会費等は企業が支払っている。個人資格の職能団体というよりはむしろ、企業にどっぷり浸かる組織だ。すなわち、登販自身が「独立」しなければ話は始まらない。

 そして、独立した登販が職能団体組織の中核を背負うこととなれば、次に浮かび上がってくるのは「労使問題」。経営側ではない労働者側が幹部に就くわけだから、JACDSとの関係は微妙になる。どうしても、職場環境や賃金待遇などがテーマに上がり“労使交渉”の色彩が濃くなる。それでも登販自身の組織だ。企業はある程度許容すべきで、登販個人も所属企業との関係は是々非々で臨むべきだろう。

 労働側の勤務者だけの組織は、医療・医薬業界でもさほど多くはない。看護師の職能団体である「日本看護協会」や病院薬剤師の「日本病院薬剤師会」くらいだ。ただし日本病院薬剤師会の場合、幹部は国公立大学の薬学部教授や大病院の薬剤部長などで、いわば「エリート」。勤務者の組織といっても、若干毛色は異なる。よって労使問題には発展しない。むしろ登販に近いのは看護協会かもしれない。労働者だけが構成員。登販の立場と似ている。

 看護協会は前回の参院選でも組織内独自候補を立て、17万票以上を獲得し当選させている。このとき、日本薬剤師会の候補が集めた票数は12万票程度。組織力、政治力とも看護協会のほうが長けている。さらに看護師といえば、病院内での存在感はある意味、医師以上だ。ときに、医師に指示する看護師すら在籍するという。しかも患者からの信頼は厚い。

 登販がめざす世界は、組織においても、個人においても、看護師に見習う点が多い。職能団体として参考になる。そのうえで最大のポイントは、看護師のように患者からの絶対的な信頼を得ることだろう。DgSへ一般用医薬品(OTC)などを買い求めに来る、生活者からの絶対的な支持だ。

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