シンの「フォーマット」とは何か?セブン-イレブンに学ぶ

島田研究室代表:島田陽介
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セブン-イレブンに学ぶ「フォーマット」

 フォーマットとは、単なる「企業構造」ではない。企業自らが、どのような複数の規制あるいは“縛り”を、いわばトレード・オンして、背負い、そうすることで実現する「仕組み」が、フォーマットである。とすれば、フォーマットを知るのに、わざわざ米国に出かける必要はない。目前に最も適切な事例があるからだ。個店経営の祖、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)である。セブン-イレブンは創業するにあたり、8つの縛りを自らに課した(図表❶)。それが米国チェーンにも勝る「フォーマット」の実現をもたらした。

セブンイレブンの店内
セブン-イレブンは創業するにあたり、8つの縛りを自らに課した。それが米国チェーンにも勝る「フォーマット」の実現をもたらした。

 セブン-イレブンはこの縛り、あるいは「限定」によって生まれたフォーマットを、創業以来、50年間守ってきた。これこそが典型的なフォーマットであることは、「チェーン理論」に触発されて起業し、その後大企業に育ったビッグストアと対比してみれば明らかである。

 ビッグストアは売場面積、取り扱い品目数、ねらう商圏の範囲、業態などに縛りを一切かけず、独自アソートの限定もしなかった。「売れるモノは何でも売って、とにかく売上を伸ばしさえすればいい」という売上至上主義であった。扱う商品はNBも、その廉価版のプライベートブランド(PB)も、SBもある。マネジメントは本部一括の場合も、個店の場合もあり得た。そこには「ビッグストア」という大まかな概念・通念があるだけで、フォーマットといいうるものは存在しなかった。誤解してもらっては困るが、「だからダメなのだ」といいたいのではない。

 事実、ビッグストアは食品スーパー(SM)と並ぶ、江戸時代以来続いた「商業」とはまったく異質の「流通業」という産業を創り上げた創造者であった。理論として唱えられていた「画一品揃えの売店チェーン」とは完全に異なるものの、チェーン理論はビッグストアを否定したわけではない。むしろダイエー(東京都)、ジャスコ(現イオン)、イトーヨーカ堂(東京都)などのビッグストアこそ、チェーン理論の理論的な正しさを証明した事例であると主張し、高く評価していた。

 ビッグストア企業群も、チェーン理論の最も強力な支持者だった。それはチェーン理論の提唱者もビッグストアも、互いに認めていた公然の事実である。つまり、チェーン理論もビッグストア企業群も、とにかく売上を上げ、店数を増やすことで、「売上規模の大きい大企業」、すなわち「かつての商業とは異なる流通業を創る」という点では、意見が完全に一致していたのである。

図表❶セブン-イレブンが自らのフォーマットに課した8つの縛り
図表❶セブン-イレブンが自らのフォーマットに課した8つの縛り

「売上はすべてを癒やす」は本当なのか

 セブン-イレブンのユニークさは、チェーン理論もビッグストアのロジックも完全に無視し、独自のフォーマットを前提に、まったく異なる「チェーン」を創造したところにある。だから、

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