SPA化!U.S.M.Hがフードテック企業と描く、新たな成長戦略とは

取材・文:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長:以下、U.S.M.H)がフードテック企業との協業を加速させている。植物工場の企画・運営などを行うプランテックス(東京都/山田耕資社長)とともに野菜の製造小売事業に乗り出すほか、米ビヨンド・ミート(BEYOND MEAT)社と植物由来代替肉の独占販売契約を締結し、卸売事業にも乗り出している。その背景とねらい、今後の戦略をレポートする。

協業先と変革を加速する「AKIBA Runway」

 U.S.M.Hは2022年3月、オープンイノベーションプラットフォーム「AKIBA Runway」を始動した。グループの枠を超え、独自の技術をもつスタートアップ企業等と連携・共創を図ることで、新しい価値創造をめざすことを目的としている。

 同プラットフォーム開設の背景には、22年度までの3カ年中期経営計画を進めるなかで見えた課題があった。同中計では、「コスト改革」「フォーマット改革」「ワークスタイル改革」「デジタル改革」の4つの改革を掲げている。このうち「フォーマット改革」では、「新業態開発プロジェクト」を立ち上げ、消費者に新しい買物体験を提供できる業態開発に取り組んできた。

 そうしたなか、従来のネットワークでは新しい価値創造には限界があるため、スタートアップ企業をはじめ新しい関係者と協業していく必要性を強く感じるようになったという。

U.S.M.Hプログラムマネジャーの満行光史郎氏
U.S.M.Hプログラムマネジャーの満行光史郎氏

 加えてU.S.M.Hプログラムマネジャーの満行光史郎氏は「外部からの新しい提案を検討する際に、一部の部署だけで対応する体制では、会社にとっての変革の機会を逃してしまうという可能性があった」と話す。そこで、U.S.M.Hグループ各社から集まった計6人の主要メンバーから成る「AKIBA Runway」を立ち上げ、外部からの提案を全社的な視点で検討し、可能性があるものは関係部署につなぐ仕組みをつくった。

 同プラットフォームの名前は、U.S.M.Hの本社があり新しい価値が日々生まれている街でもある「秋葉原」、飛行機が飛び立つ滑走路を意味する「ランウェイ」を組み合わせて、「AKIBA Runway」とした。

 この新しい試みのうえでまず必要だったのが、協業先を募ることだった。ニュースリリースなどでの情報発信のほか、各地で開催されるスタートアップ企業やテクノロジー企業が集まるイベントに積極的に参加してU.S.M.Hの取り組みを発信した。これによりネットワークが広がり、最近ではそのつながりから協業先を紹介してもらえることも増えてきた。結果、これまで協業を検討した案件は70を超え、すでに約30案件が実際の協業に結びついているという。

1日約5000株のレタスを自社生産

 「AKIBA Runway」では、

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取材・文

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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