実店舗復活とD2C拡大で活況となるRaaSの実店舗支援サービスとは?

在米リテールストラテジスト:平山幸江
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RaaS(Retail as a Service:小売事業のサービス化)というキーワードを耳にする機会が昨今増えている。大まかに言えば、蓄積した顧客データや販売データに最新テクノロジーを掛け合わせ、サービスとしてパッケージ化して外販するという新しいかたちの小売ビジネスを表す言葉だ。米国ではそんなRaaSの一種として、D2Cブランドなどオンラインにしか販路を持たない小売事業者に対し「実店舗の出店支援を行う」というサービスに注目が集まっている。

「出店支援サービス」が注目される理由

 米国では近年、いわゆるアマゾン・エフェクトとオーバーストア化によって、“小売の黙示録”という言葉が定着するほど退店や倒産が続いてきた。しかしこれが一巡し、コロナもほぼ収束したところで消費者は再び店舗に戻っている。

 2022年10月4日付の「ウォールストリートジャーナル」紙では、「小売関連の不動産市場が過去数年で最大規模のリバイバル(復活)」という見出しで活況を報告。そして大手商業不動産企業クッシュマン&ウェイクフィールドが発表した22年第4四半期レポートでは、インフレによる消費冷え込み懸念はあるものの、ショッピングセンターの空き店舗率は07年以来最低水準の5.7%、リース料(提示価格)は1平方フィート当たり全米平均で22ドル99セントに上昇したことが示されている。

 実店舗が復活を遂げる一方、近年成長が目覚ましいD2Cブランド市場も依然拡大基調にある。米国の主要D2Cブランドの推定売上規模は22年が1557億ドル、24年には2129億ドルとなる見込みで、18年から24年までの年平均成長率は19.6%に上る。

 “実店舗復活”と“D2Cの拡大基調”という2つの潮流のなかで注目を浴びつつあるのがD2Cブランド向けに「出店」を支援するサービスだ。いわゆるRaaSの一種として、複数のプレーヤーが参入している。

 そもそもRaaSという言葉が世に広まったきっかけの1つは、開発されたばかりの製品を実店舗で消費者に発信するビジネスモデルを築いた、b8ta(ベータ)の登場だろう。販路の中心がオンラインである新興ブランドに、リアルならではの顧客接点やデータを提供するという同社のビジネスモデルは、出店支援ビジネスの先駆けともいえる。

 ただb8taに関しては、後述するが、米国においては物件の所有者との交渉が決裂し、22年に米国の店舗がすべて閉鎖されたことが明らかになっている。

ショールーム型の注目株「ショーフィールズ」

 出店支援サービスは2つのタイプに大別される(図表)。

図表●出店支援サービス 2つのタイプ

 1つは、

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