全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法

河合 拓
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作りすぎは金融主導で再編を 人権問題は政策で解決する

 まとめよう。作りすぎコストを消費者に転嫁するのは筋違いだ。アパレル企業は、作りすぎようと思って作りすぎているのではない。作りすぎれば、貸借対照表の資産が増加し現金が減少し、デット(借り入れ)が増加する。やがて有利子負債が増えて企業の運転資本(企業活動の基本的な仕入、売上コスト販管費)を侵食し、企業は破産する。

  このように、作りすぎの問題については「放っておく」ことで、企業の新陳代謝が進んでゆく。実際、米国でアパレルが次々と潰れていったのは、そういう背景があったからだろう。私は、半官半民で不良債権を買い取るファンドをつくり、ソフトランディングさせながら産業界の新陳代謝をさせてゆく戦略を提言したい。やれといわれれば、私がやってもよい。価値のある企業は必ず買い手がつくし、これからは価値ある企業同士が競争関係から協業関係に変化する。こうした、金融をつかった産業再編のデザインをすることで、緩やかに産業全体の最適化をすすめてゆくことだ。

  さらに、人権問題については、この際、前述のプロトコル統一と生産工場のCertificationによる日本主導による認証制度を世界に先駆けて導入し、優遇税制適応を政策手動で行うことである。世界で二番目のファッション商品の商品国である日本が世界に引率してこうしたことをしてゆけば、必ず日本は世界に誇る国になることが可能だ。

 この二つが、私が提言するアパレル産業を守るための正しいアプローチである。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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