GMS衣料のジレンマと真実!イトーヨーカ堂アパレル完全撤退の必然とは

河合 拓 (代表)
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西友から生まれた「無印良品」だけが成功した理由

上海の無印良品(Robert Way/istock)
西友から生まれた無印良品はいまや世界企業に(写真は上海の店舗、Robert Way/istock)

『ブランドで競争する技術』では、「西友」のプライベートブランドであった「無印良品」が、なぜ今や世界ブランドになったのかを、あらゆる関係者のインタビューを元に作成・分析し結論を導き出した。

それが「出島理論」である。GMS本体から切り離し、無印良品は出店、採用、システムなどを独自に開発したことと、ハッキリとした世界観をもっていたことが理由で、世界企業にまで上り詰めたのである。「いわゆるスーパーのブランド」が格好良くなったもの、というコンセプトが受け入れられたのである。その後、私は大手総合商社、大手ファッションビルで「出島理論」を使い企業再建に成功していた。

その時われわれは、あらゆる調査を行い、「必需品と必欲品は同時に売れない」という結論を導き出した。

そもそもGMS (General merchandized store: 日本では「総合スーパー」と訳されて具体的には、日常で必要とされる商品を、幅広く取り扱っている大規模な小売店をいう)自体を変えずに、SPA(アパレル専門店)を習っているとは滑稽以外のなにものでもない。このあたりは、「良品計画」が世界企業になった理由を失敗事例も含め非常に詳しく書いているので、ぜひ「ブランドで競争する技術」を読んでいただきたい。

 話を、冒頭の会議に戻す。実は、私が発言したことはクライアント以外の誰もが感じていたことだった。しかし、この一言はなんと10年以上、誰も口にせず放置されていたし、そもそもGMSに入社する人は、私のような、いわゆる「アパレルバカ」ではない。だから、必需品も必欲品も同じように考えるのだ。

しかし、必需品は「商圏内の胃袋の大きさ x 胃袋の数競合に奪われる客数」という公式から安定した数字を計算で算出することが可能だ。したがって、フードロスのような指標もあるにはあるが、アパレルのように残品率(KPIの一つで、総仕入で売価変更をしても売れ残る売上比率)30%で20%も破棄損が残るなどということはない。

また、例えば魚のように、売れ残って新鮮さが落ちてきたら、刺身や焼き魚に加工して売り切るということもアパレルではしない。アパレルのような必欲品は、リスク回避は受注生産しかないのだ。なぜなら、商品が持つアトリビューション(その商品の価値を決定つける要因)が、デザインにあるのか色にあるのか、価格にあるのか、機能にあるのか、さらに細かく分析してみなければ分からないからだ。単純な必需品と違い、戦略変数が圧倒的に多いのである。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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