企業再生最終章 - 揺るがぬ哲学に裏打ちされた当事者が持つ「シンプルな戦略」だけが企業を救う

河合 拓
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企業再生の本質は人間改革

izusek / iStock
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 企業は人なり。使い古された言葉だが、企業が変わるということは人が変わるということだ。そして、人を変えるためには、高い熱量とコミットメントしかない。熱量のない人間のいうことは、どれだけ筋が通っていても屁理屈に聞こえるし、その企業の文化、そして、ときに破綻に至る経緯にさえ尊敬の念をもって受け入れることができない人間に人はついてこない。

 また、もっとも結果に対して責任を持っていない立場の「コンサルタント」が、最も強いコミットメントを見せることは容易ではない。人間というのは、必ず態度に出るからだ。高い報酬をもらい、自分だけは安全な船の上に乗っていると思われたら、そのような人間に人はついてこない。

 私は、資本主義のメカニズムを信じている立場だ。このコロナ禍は、神が与えた試練だとしたら、国内に止まり何十年も同じビジネスを続けてきて、まさに産業崩壊の淵に追いやられているアパレル業界は、資本主義のメカニズムによって、体力のあるものと価値のあるものだけが生き残るだろう。

 こうした産業再編の流れを横から眺め、高みの見物をするか、あるいは、ビジネスチャンスと見て金儲けの道具にするか、または、自らが思うような新しい産業を創ってゆくかは、我々一人ひとりの問題である。

 企業再生というのは、第三者からみれば、ビジネスの道具にもなれば、この会社を救いたいというミッションにもなる。

 今、アパレル業界は破綻の淵に追い込まれ、アフターコロナの時代には、全く違う世界がまっている。日本のアパレル産業を守る唯一の手段は、当事者自らが考え、そして、第三者の金儲けの道具にならないような「戦略」を自らが持ち、そして、第三者と徹底してディベートできる「言葉」を持つことだ。
 破綻の淵に追い込まれている企業は、何十年も同じやり方をかえず、社員は顧客を見ずに上司と組織の論理を見てきたのではないか。私は、是非この9連載を最初から読み、そして、事業管理者はこれから何十年も働く20代、30代、そして40代のことを考え、会社を正しい方向に導いて欲しい。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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