企業再生最終章 - 揺るがぬ哲学に裏打ちされた当事者が持つ「シンプルな戦略」だけが企業を救う

河合 拓
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「働き方改革」とは真逆にあるのが企業再生

 今まで、限られた情報だけを与えられ、ボーナスという「馬のニンジン」をKPI(重要業績指標)にされて、ただ、前に走ることだけを強いられてきた現場は、いきなり考えろといわれても最初は戸惑うが、次第に驚くほどのスピードで成長する人間が数人でてきて、「改革の騎士」となる。「改革の騎士」というのは、私がつけた名称で、将来の幹部候補である。改革は、役職に関係なく、「改革の騎士」を中心に進めてゆくことになる。

 企業再生とは、「働き方改革」とは真逆にある。現場の誰より早く出社し、遅くまで残っている社員がいたら、彼、または彼女たちが帰るまで一緒に仕事をする。悩んでいるようであれば、飲みニケーションも必要だ。私は酒が飲めないのだが、毎晩のように彼ら、彼女たちと飲みに行く。最近では、企業は交際費をカットしているので、さすがに飲みニケーションも毎晩のように続くと大変だが構わない。会社がなくなり、雇用が脅かされている人達に比べれば、私の痛みなど微々たるものだ。なにより、再生途上の人達と飲みにゆくのは、彼ら、彼女らとの「精神的な距離感」を縮めてくれ、仲間意識を高めてくれる。

 飲みニケーションの場では、決して後ろ向きなことは云わない。本当は、胃に穴が空くほど辛く、逃げ出したい気持ちで一杯なのだが、皆が私に期待をしているような状態になっている。そういう時に、大将が折れてしまったら絶対にダメなのだ。そう、私はこうした状況においては、もはやコンサルタントなどでなく、内部の人間の一人、しかも、彼らにとっての上司のような存在なのである。

 

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