人類未体験ゾーンに突入!ユニクロ以外アパレル全滅の時代 生き残るためのサステナブル経営の本質とは

河合 拓
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2020年は新型コロナウイルス感染拡大に翻弄された1年となったが、一方でビジネスにおける「サステナブル」が大いに注目された年でもあった。本連載の2020年最後の論考は、この「サステナブル・ビジネス」について、多くの人が誤解していること、そしてその本質について明らかにしたい。

faithiecannoise / istock
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これまで、経済を牽引するエンジンは物欲だった

 少々抽象的だが、理解を深めるために、大局的な話から始めたい。

 国の経済発展の歴史を見れば、途上国はまず繊維産業で成長し、その後ブランドなどの無形資産(Intangible asset)のOEMを手掛け、その生産性を上げていき、次第に、自らブランドやマーケティングの領域に打って出る。さらにハイテク技術や金融などに軸足を移し、恐ろしいほど生産性を高めGDP(国内総生産)を押し上げ、先進国の仲間入りを果たしていく。日本も戦前、戦後、国を支えた産業の一つは繊維であったし、現在の大手商社はすべて繊維問屋から派生したものだ。バングラデッシュの輸出の8割は繊維・繊維製品なのだが、やがて彼らも産業の軸足を移してゆくだろう。

 このように、経済成長を牽引する大きな原動力は人の「物欲」と「豊かさ」である。例えば、日本では3C (カラーテレビ、クーラー、カー:豊かさの三種の神器)などという言葉が流行したが、戦後、テレビで米国の豊かな家庭を見て驚いた日本人は、彼らに追いつくために「モーレツ社員」となり昼夜問わず働き続けたのである。ちなみに、当時のリゲインのCMキャッチは「24時間戦えますか?」だ。働き方改革とは真逆のことをしていたわけである。そして、当時、日本の「先生」は米国で、私も一昔前は米国で開催されるデジタル展示会に出向き、「我々の先生はこんなことをしている」といって、情報を先んじて得、日本で稼いでいたものだった。さらに、こうして目覚ましい経済発展を遂げてきた日本を研究してきたのが韓国、台湾だった。

人類は未だかつて経験したことがない世界へ

 しかし、めざましい経済発展の結果、先進国では誰もが欲しいものは手に入れられるようになり、モノに溢れた時代へ突入する。

 人が「消費」し、また、企業は「消費財」を供給する。このような関係が崩れ、人も企業もいまだかつて経験したことがない時代に突入したのである。もはや「物欲」がなくなった人類は「消費者」でなくなり、また、経済を牽引してきた「物欲」は消えた。安直な発想しかできないマーケターは、「モノからコトへ」などといっているが、実際には、マーチャンダイジングミックスをしているだけで、依然「物販」で利益を得るというビジネスモデルは変えていない。コンテクストが大事だ、などという人もいるが、その先にあるのは、やはり「物販」である。

 端的に言えば、人はモノを消費しないし必要ともしていないのに、企業は屁理屈をこね、あの手この手で「物販」で売上・利益を求め、人を「消費者」と呼び、さらにロボットやハイテクを使って針の穴を通すような小さい売上拡大努力を続けているのである。

 

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