アフターコロナをアパレル産業が生き抜くための起死回生策「マルチプラットフォーム戦略」の全貌

河合 拓
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「ユニクロと同じ商品回転率」が無意味な理由

ユニクロ店舗前
2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon

 正しい分析を行えば、企画原価率が20%で、損益計算書の原価率が60%なら、その差の40%は、「値引き」と「ライトオフ(商品滅却)」なのである。つまり、仕入れ先を虐め品質劣化をするのでなく、自社商品の値付けを工夫し、商品ライフサイクルの短い「博打商品」の割合を減らし、売れていた時代のQR (Quick Response)を直ちに辞め、私が提唱するZARA型のタパス小皿料理型MD、つまり「売り切り御免型」にすべきなのである。

 また、デジタルベンダーがよく使う、判で押したような「商品生産のリードタイムを短縮せよ」というのも誤った考え方だ。もちろん、無駄な会議や意味の無いサンプリング(今は3D CADを使った修正が世界基準)は撲滅すべきである。しかし、今は、しっかりと時間をかけて、素材から開発した商品の方が売れる。商品回転率が高いか低いかによる評価というのは、どのような消費者に価値提供するかという戦略によって決まるのだ。もし、商品回転率が高ほうがよいなら、なぜ、ユニクロのように長期開発型で商品回転率が長い企業が世界企業になっているのか説明できないだろう。

 ファーストリテイリングは、回転率をあげようとしているが、それは、生産工程の70%をオートマチックにするという超絶なスピードを前提にしたものなのだ。同社は、社内メールは3行以内で、会議は30分がデフォルトである。こうしたスピード経営を可能たらしめるためには、「社内評論家」は追い出されることになる。自ら徹底して準備をし、30分の会議にあわせて自分の提案や意見をまとめる事前準備に何日もかける必要があるからだ。
 それに対して、多くの日本企業はなんの準備もせずに会議に出て、そのとき思いついたことを脈略無く話し、否定されたら恨みを持って返り血を浴びせるという幼稚なことばかり行っている。
 こうした結果長くなる回転率とユニクロの回転率では、似て非なるものであるということを知るべきだろう。指標というのは、その裏にあるロジックと現場の実態が大事なのであって、そのロジックを把握や実態を把握することなく、闇雲に昔の指標を追いかけてもダメなのだ。

 別の事例も紹介しよう。経営トップが正しい戦略を言い続けても、執行役員以下が、それを正しく理解せず、現場もまた混乱しているというケースだ。トップが、「ここに商機がある、ここを攻めよ」と号令をかけても現場は動かないのだ。キックオフだけは勇ましく始めるのだが、入念な準備もなく、とりあえず会議を繰り返す。繰り返しているうちに現場は結論のでない、論点の定まらない会議にむなしくなって、一人、二人と抜けてゆき、最後は担当役員が「忙しいからお前がやれ」と現場に投げフェードアウトするパターンだ。
 しかし、このケースは救いようがある。なぜなら、経営がどこに行きたいかという明確なゴールを持っているからだ。こうした場合は、ぜひコンサルタントの活用を検討してもらいたい。たとえば、こういうケースにおいて私が果たす役割は、経営の意図をしっかりくみ取り、現場用語に翻訳し、バイトサイズ(噛むことができる大きさという意味で、「乗り越えられるステップ」)に分解し、時に迷っている人を助けながらハンズオンで目標達成までの道程を一緒に併走する。私は、業務もできるから、時に見本や手本を見せることも可能だ。決して、報告書だけ出して立ち去るコンサルにはできない芸当だと自負している。

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