アフターコロナをアパレル産業が生き抜くための起死回生策「マルチプラットフォーム戦略」の全貌

河合 拓
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顧客視点でマルチプラットフォームを構築せよ

ConceptCafe /iStock
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 販売物流も、今は20%が再配達で、空気を積んだトラックが、何台もショッピングモールに向かっている。なぜ、こういう非効率な領域を纏めようとしないのか。私が提唱するデジタルSPAを使えば、自動で解決してくれる。私は、現在、PTCというPLM (Product life cycle management)のパッケージ企業のボストン本社と直接コミュニケートし、世界のバリューチェーンの情報交換をやっている。彼らは、すでに、一元化をするソフトウエアの導入手法、3D CADを使ったサンプリング、そして、なんと、バラバラ配送する物流までまとめ上げる仕組のソリューションを持ち、連携しているのだ。

 私は、こうしたデジタルツールを商社が導入し、クラウド化して海外の工場や日本のアパレルにSaaS(Software as a Service)で提供する、マルチベンダー・マルチアパレルのデジタルプラットフォームが商社の生き残る唯一の道だと思っている。

 上から目線の物言いで恐縮たが、今のアパレル業界が産業崩壊に追い込まれたのは、まさに「戦略軽視」と「自前主義」だ。アパレル産業は、歴史的にあまりにオペレーションだけを追いかけ、お客様を見ず、リテール先進国という理由だけで「アメリカ様」を見てきた。そして、日本と自社固有の事情を無視した安直な発想でデジタル化を推進しようとしてきた。また、社員は自分の上司の顔色を見て仕事をしている。

 こうした組織にあるのは「顧客不在」だ。結果、バリューチェーン全体の利益を平等配分するという40年前からいわれてきた「全体最適」は、かけ声だけとなり、各社それぞれ「自社だけが儲かればよい」という発想でデジタル化を進めてきた。これでは成功するはずがない。

 産業は、新陳代謝を繰り返す。だから、消えゆく産業はどんなターンアラウンドマネジャーでも救いようがない。だが、この業界の人材も、捨てたものではない。最近、商社からの講演依頼が多いのだが、若手社員の中には「自分はまだ無力だが、このデジタルSPAに自分の人生をかけたい」といってくれる人たちがいる。そういう声を聞くたび、私はあきらめないつもりだ。

 

 政府はのんきに、「これからはコロナと共存する」などといっているが、これは「根治」をめざすことをあきらめているということだ。つまり、「グレーの人」は、これからも日本でウイルスをまき散らし、これを放置するということである。
 また、「第二波」「第三波」など、政府は、まるでコロナが「竜巻」の如く我々に襲いかかってくるような印象操作をしているが、そんな「竜巻」など存在しない。単に「グレーの人間」を放置しているがゆえ、彼らが、あちこちでウイルスをばらまき、そのウイルス感染が拡大することを「XX波」などと呼んでいるだけなのだ。つまり、「竜巻」を巻き起こしているのは日本政府に他ならない。我々はもっと「言葉」の持つ意味をしっかり読み解き、印象操作から逃れられるだけのリテラシーが必要なのである。
 おそらく今回が、アパレル産業が生き残るための最後の提案になるだろう。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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