スポンサーがつくアパレル、つかないアパレル……名門レナウンの破綻は業界再編の序章

河合 拓
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 天気とトレンドのせいにするビジネスは博打と一緒

都内のユニクロ店舗
「うちはユニクロとは違う」そう思っているのはアパレル企業だけで、消費者はそう判断していない。ユニクロの売上の大半は山の手の富裕層だという事実を、多くのアパレル企業は知らないのだ(写真:ロイター)

 そして、業績悪化の結果は、常に「天気」と「トレンド」の責任に転嫁された。「天気」や「トレンド」など誰も予想できない。つまり、「私は博打ビジネスをやっています」といっているのと同じである。この時点でリスクマネー(ヘッジファンドなどの資金のこと)はアパレル企業に向かうことはなくなった。投資の世界では「アパレルには絶対投資をしない」という意見が圧倒的となった。

  レナウンを含む多くの企業が、百貨店で、成金化したアジアの人間しか買わないような法外な値段で服を売る一方で、ユニクロが圧倒的なコスパで「シングルプレイ」をエンジョイするという構造になっていた。

  こうした分析に対しても「うちはユニクロとは違う。ブランド力がある」と彼らはいう。しかし、私は年間に数万人という女性に消費者調査をやっているマーケティングのプロである。ブランドだと思っているのは本人達だけで、多くは「ユニクロと高額衣料品を同列衣料品」として使い分けている。

 実際、日本人は、富裕層も、そうでない層も等しくユニクロを買っている。ユニクロの売上の大半は山の手の富裕層であるということさえ分析していない。だから、私は30年もこの業界に身を置いているにもかかわらず、昔話が嫌いなのだ。昔話からはなんら将来の展望は見えてこない。「あのころはよかった」とつぶやいてもしかたないのである。現実を直視することが、今我々に求められていることなのだ。

 

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