スポンサーがつくアパレル、つかないアパレル……名門レナウンの破綻は業界再編の序章

河合 拓
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レナウン破綻は業界再編の序章

 昨年の冬、私はアパレル業界を席巻した「デジタル祭り」を厳しく批判した。なぜなら、消費者ニーズを全く無視した奇妙なデジタルツールが次々と出ては消えてゆき、時にROI (投資対効果)測定も正しいやり方とはいえない方法で行い、効果がでたのかでないのかうやむやになっていたからだ。結果、経営悪化した企業が金融マーケットに持ち込まれた。「これからは、デジタルの時代だ」と思っていた私を待ち受けていた仕事は、デジタルとは全く関係ない「企業再建」の仕事だったのだ。

「この企業が?」と驚くような名アパレルが次々と死の淵へと追いやられるなか、私は当時、自分の全てをかけて一つの会社を救っていた。コロナショック以前の話である。

  モール型ECへの出店は「悪魔との契約」だ、「市場が縮小する時代では、売上でなく利益を追いかけろ」、「欠品は追いかけるな。余剰在庫を極小化せよ」など、私のターンアラウンド(再生)の経験から来る分析や提言はことごとく無視され、多くのアパレルは売上至上主義の名の下、溢れんばかりの余剰在庫を抱えキャッシュフローを悪化させた。その結果、市場が30%も消滅しているのに、業界全体で投入点数を20億点から40億点に倍増させた。

 こうして、狂気とも思えるMD計画の結果、衣料品は総需要の30%も供給過多となったのである。そんな状況の中で、どれほどAIの精度が高くとも「需要予測」など役に立つはずがない。そんな簡単なことさえ理解できなかったのである。

 

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