スポンサーがつくアパレル、つかないアパレル……名門レナウンの破綻は業界再編の序章

河合 拓
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スポンサーがつくアパレル、つかないアパレルの違い

 57日、ユニクロが都内など営業休止していた49店舗を営業再開した。ユニクロ以外のアパレルは、自ら先頭にたって何かをやることをしないが、ユニクロがやれば「私も」と、次々と営業を再開し始める。この原稿を書いている518日時点で、次々とアパレルが店を開け営業活動を再開しはじめている。

 また、いままで「天気」と「トレンド」で、業績を説明してきたアパレルもデューディリジェンス(企業価値評価)で丸裸にされ、ようやく科学的管理手法を導入しはじめた。そうなると、格安で買えるアパレルにリスクマネーが動き出す可能性が高い。

 投資マネーは「付加価値のある場所」へと向かう。アパレル企業の中には、独自の技術を持つ、あるいは、超優良顧客を持つなど、他のアパレル企業とは違う独特の強みを持つ企業が多数存在する。そうしたアパレル企業には必ずスポンサーがつく。銀行融資は、とうの昔に与信を超えているが、価値を見定めたリスクマネーを期待しているのだろう。

 レナウンが破綻したのは、残念ながら親会社である山東如意科技集団に見放されたとみるのが妥当だろう。山東如意科技集団はこれ以上続投させては事業が毀損されるのみ判断し、レナウンの会長と社長を解任したからだ。こうした分析をもって広くアパレル業界をみれば、首の皮一枚で繋がっているアパレル企業も、さしたる強みもなければ救済される可能性は低い。清算した方が得と金融機関や親会社が判断すれば第二第三のレナウンが生まれることになるのだ。

 「日本企業はそこまでドラスティックに決断しない」という意見もあるが、コロナショックの前から死に体となっているアパレル企業は乱脈経営が原因で破綻寸前に陥っている。こうした企業を銀行が支えられなくなった時、私は金融主導でM&Aの嵐が吹き荒れアパレル業界の再編が進むと思う。私の視点は、こうした全体像の中で「レナウン破綻」を位置づけているため、「レナウン破綻は業界再編の序章」とみているわけだ。

 そうしたなか、政府は次々と各自治体の緊急事態宣言を解除し、経済活動を再開しはじめたが、そこには、「コロナ第2波」というリスクが待ち受けている。韓国では、人がクラブを徘徊しただけで100人以上がコロナウイルスに感染し3000人が感染疑いとなった。このウイルスはそれほど恐ろしいのだ。

  前回の論考で、「人が動けば2年後に50万人死ぬ」、「人が動かなければ2年後に60兆円の経済損失が出る」と書いた。政府はこうしたトレードオフを明確にせず「手洗いダンス」などをYouTubeで流す程度のことしかしていない。

 真のリーダーとは、このようなトレードオフ(何かをとったら何かを失う)を明確にし、国民に「我々はこちらを選択する」と言い切れる人だ。私は、1ヶ月の超法規的強制力をもって国民をロックダウンすればこの問題は解決すると提言をしたが、残念ながら誰にも相手にされていないようだ。つまり、我々は「動いて2年後に50万人死ぬ」道を選択したのである。あとは、ワクチン開発と人が死ぬスピードの競争となる。

 くどいようだが、既にアパレル企業の約半数は既に死に体となっていて、金融機関が営業活動の再開とリスクマネーの流入を待っているのだ。逆に言えば、残す価値がないと判断されたアパレルはレナウンの二の舞になる可能性が高い。レナウンの破綻は業界再編の序章なのである。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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