経済疲弊の地・北海道で、なぜチェーンストアだけが成長し続けるのか

2019/04/15 05:00
浜中淳(北海道新聞)

北海道現象から20年。経済疲弊の地で、いまなお革新的なチェーンストアがどんどん生まれ、成長を続けている。その理由を追うとともに、新たな北海道発の流通の旗手たちに迫る連載、題して「新・北海道現象の深層」。第1回は、時計の針をその当時に戻し、北海道現象とは何だったのか、なぜ起こったのかについて解説します。

東京・新宿に出店したニトリ
東京・新宿に出店したニトリ

有名アナリストの眼力により「発見」された現象

 「実は『北海道現象』という言葉が最近話題になっているんです。今度、特集を組むのでご協力いただきたい」。札幌に取材にやってきたチェーンストア・エイジ(CSA)誌(ダイヤモンド・チェーンストア誌の前身)の記者からそう切り出されたのは、今から20年以上も前の1998年9月初旬のことでした。

「北海道現象」とは98年夏、メリルリンチ証券シニアアナリストの鈴木孝之さん(現プリモリサーチジャパン代表)が執筆した投資家向けリポートの中で初めて使われたワードです。当時の北海道経済は、97年11月の北海道拓殖銀行の経営破綻の影響で深刻な不況に陥っていました。そうした中で、札幌に本社を持つ小売りの上場企業、食品スーパーのラルズ、総合スーパーのマイカル北海道、ホームセンターのホーマック、家具・インテリア製造小売りのニトリ、ドラッグストアのツルハの5社が急成長していることに、鈴木さんは着目したのです。事実、拓銀破綻直後の98年2月期(ツルハは5月期)決算で、5社はそろって増収増益を達成し、過去最高益を更新しています。

札幌市内のツルハドラッグ
札幌市内のツルハドラッグ

  私は当時、北海道新聞経済部で流通業界の担当記者をしており、CSA誌とは、時折、北海道流通に関する原稿を依頼されて執筆するという関係にありました。しかし「北海道現象」というワードを初めて耳にした時の印象は「そんな大げさな話なのかな」。つまり、あまりピンと来なかったというのが正直なところでした。物事の渦中にいると、得てして大事なことを見落としてしまうものです。そのころの私たち北海道の流通記者の最大の取材ターゲットは、主力行・拓銀の破綻によって経営危機に直面した老舗百貨店・丸井今井でした。もちろん、ラルズやホーマックの業績が好調であることは分かっていましたが、これを「現象」ととらえる目は持っていなかった。そもそも都銀がつぶれてしまうような北海道に、そのような凄い企業が存在するなんて、北海道民自身が全く信じていなかったのです。その意味で「北海道現象」は、鈴木さんという優れたアナリストの眼力があって初めて可能になった「発見」だったと言えるでしょう。

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北海道現象が起こる、その合理的な法則とは!?

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