アークランズ誕生でビバホームが消滅へ……吸収合併が意味するところとは

棚橋 慶次
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アークランドサカモト(東京都/坂本晴彦社長COO)は、2022年9月1日をもって、完全子会社のビバホーム(埼玉県/坂本晴彦社長CEO)を吸収合併する。吸収合併にあわせ、存続会社であるアークランドサカモトはアークランズに社名変更、同日をもって株式会社ビバホームは解散する。
今回の記事ではホームセンター業界の生き残りをかけた大競争時代を考察しつつ、アークランドサカモトによるビバホームの子会社化から吸収合併に至るまでの経緯とその意図について考察してみたい。

スーパービバホーム埼玉大井店

「小が大を呑み込む」買収劇!

 アークランドサカモトの設立は1952年、金物卸を扱う「坂本商会」として創業した。ホームセンター・DIY事業に進出したのは1978年で、2022年時点において同社が運営する「ホームセンタームサシ」は新潟県を中心に富山・石川などの日本海側エリア、近畿圏で38店舗を運営する。ホームセンタームサシの売上高は700億円前後となっている。

 このほかアークランドサカモトは、外食チェーン運営のアークランドサービスホールディングス(東京都/坂本守孝社長)を傘下に抱える。「ホームセンタームサシ」の名を聞いたことがなくても、カツ丼専門チェーン「かつや」は知っているという読者も多いだろう。

 一方、住宅設備を主力事業とするLIXILグループ(東京都)傘下だったビバホーム(当時の社名はLIXILビバ)。買収前の2020年3月期の売上高は1885億円弱、本部を置く埼玉県を中心に、北は北海道、南は九州・佐賀まで22都道府県に100店舗超を展開していた。

 ホームセンター事業の店舗数、売上高を比較すると、ビバホームはアークランドサカモトの3倍近い規模であり、アークランドサカモトのビバホーム買収はまさに「小が大を呑み込む」買収劇だった。

巨大買収劇のゆくえは……

 当然、ビバホーム買収の道のりは平坦なものではなかった。

 売上高1兆円を超えるグローバル企業、LIXILグループがビバホームの売却を決めたのは2020年のことだ。当時のLIXILグループは、創業家一族による現役社長(瀬戸欣哉氏)の解任劇、ファンドの支援を受けた瀬戸氏の返り咲き……と経営体制が揺れた時期だ。「創業家との関係が深いビバを現経営陣が切り捨てたのでは」と揶揄する声も一部ではあったものの、「利益率の低いホームセンター事業の分離」「本業への回帰」が公式な売却理由である。

 LIXILビバの買収コンペには、複数のファンドも名乗りを上げた。買収必要資金は1000億円にのぼるとも報じられ、アークランドサカモトは資金面で劣るとされたものの、短期借入枠およびシンジケートローン(みずほ銀行・三井住友銀行)により資金を調達し、結果的に買収劇を制している。

 なお、この調達に伴い、アークランドサカモトの自己資本比率は69.7%(2020年2月期実績)から23.0%(21年2月期実績)に低下、財務状態は急速に悪化した(22年2月期実績は26%)。

 ビバホームの子会社化に伴い、渡邊修前社長を筆頭とする旧経営陣の多くがビバホームを去り、代わりにアークランドサカモトの幹部が取締役に就任している。こうしてアークランドサカモトの傘下に入ったビバホームだが、話は子会社化で終わらなかった。

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