最盛期から株価もPERも半減 ワークマンの成長ポテンシャルを分析する
一方、細かく分析すると面白い事実が浮かんでくる。「店舗ブランド別」チェーン全店売上高をみてみると「ワークマン」が50.1%で、残りの49.9%のうちほとんどが「ワークマンプラス」、あれだけ騒がれている「ワークマン女子」業態は23年3月期末で26店舗しかない(同期末店舗数は全体で981店、「ワークマン」482店、「ワークマンプラス」473店舗である)。
ワークマンのチェーン全店売上高は対前期比で8.4%伸びているのだが、うち「ワークマン女子」は新店15店舗で2.5%、既存店11店舗で0.1%の計2.6%を占めている。つまり売上成長分の3割をわずか26店舗しかない「ワークマン女子」が占めているのである。額にして41億円分の増収がこの「ワークマン女子」によるものなのである。新店分だけで計算すると、1店舗2.5億円を超えているので、ワークマンが目標とする2億円を超えている業態ということになる。一方で、ワークマン女子既存店売上高については対前期比で6.9%増となっており、こちらもワークマンプラスの既存店(全面改装1年目、部分改装1年目などを除く)よりも高い実績となっている。
とはいえまだまだ26店舗しかないので影響度は知れている。SheinやDholicなどアジアン激安ブランドがすでに若者の心を掴み日本に上陸し頭角を現している今、「ワークマン女子」がどのようなファッションセグメントなのかまだ不透明な部分もあり、その意味で出店余地を含めた伸びしろなど、固い根拠は見えにくい。

売上がどんどん増えているのに株価は下落の一途
ワークマンの謎を解くには、株価と売上の関係について述べる必要がある。まず、下記の株価チャートを見てほしい。

これは、ワークマンの10年の株価のチャートだ。創業から出店を続け、出店するたびに売上をあげてゆき、2019年末と2020年には一時10,000円超まで値を上げている。そもそも株価とは、現在の価値に、将来の期待値を加え、それらをまとめて、再び現在の価値に計算し直したものだ。
株価10,000円当時のワークマンのPER(株価収益率)は、約65倍という異常なスケールをつけていた。ちなみに、現在は株価もPERも約半分になっていて、株価が5000円で、予想PERは約24倍である。
しかし、私はここになにかの不思議を感じるのだ。確かに、ワークマンが出店計画をだしたとき、その派手な数字に株価は躍ったのは確かだ。
ここでファイナンスに詳しくない人のためにPERという指標について解説したい。まず、会社には時価総額(総発行株数の市場価値を合計したもの)がある。そしてPERとは、「Price Earnings Ratio」の略で、株価が1株当たり純利益(EPS:Earnings Per Share)の何倍まで買われているかを見る投資尺度だ。例えば会社の一株当たり純利益が100円で株価が1000円だった場合、その会社のPERは10倍ということになる。つまり、65倍というのは、ワークマンの純利益が100円であるにも関わらず、一株あたりの株価が6500円まであがったということだ。プライム銘柄の平均PERが15倍強であることから考えても、これは明らかに高すぎる(利益がほぼ出ていないハイパーグロース株であれば容認される水準ではある。グロース銘柄の平均PERは約70倍)。
「だから(株価が適正な水準に)戻ったのだ」と言われそうだが、ならば、なぜ65倍まで上がったのかと聞き返したい。
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