データ分析で商品企画まで変える!樋口正也氏が語るベイシアグループのDX戦略とは
食品スーパー(SM)のベイシア(群馬県/相木孝仁社長)、ホームセンター(HC)のカインズ(埼玉県/高家正行社長)、作業服チェーンのワークマン(東京都/小濱英之社長)などを抱え、全国約2000店舗、売上高1兆円超を誇るベイシアグループ。同グループの基幹業務システムと各種デジタルサービスの開発・運用を担うのが、戦略子会社のベイシアグループソリューションズ(群馬県)だ。プロフェッショナル人材を多く抱える同社はデジタルで何を実現しようとしているのか。樋口正也社長に聞いた。
多彩の業態がある中でDXをどう推進するか
──グループのDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する戦略子会社として2022年9月にベイシアグループソリューションズが設立されました。設立の背景から教えてください。

●京都大学卒業後、IBMで26年間にわたり、最先端のテクノロジー分野で16の事業を歴任。研究開発、新規事業、事業戦略、NY本社赴任、クラウド、AI/Watson、デジタルマーケティング、EC、サプライチェーン、アライアンス、スタートアップ支援などに関わる。2021年7月よりベイシアグループにCDO/CIOとして参画し、22年9月にベイシアグループソリューションズ社長就任。
樋口 もともとSM企業のベイシアの中に、業務支援システムの開発など担う「ベイシア流通技術研究所(以下、流技研)」という組織がありました。流技研では、かねてよりカインズやワークマンなどベイシア以外のグループ企業の支援を行うなど、グループを横断する動きをしてきましたが、そうした重要な機能を持った組織がベイシアという1つの企業にぶら下がっているのは、ある意味で不自然な状態でもありました。そこで、ニュートラルな立場の企業としてカーブアウトしたのが、ベイシアグループソリューションズとなります。
──ベイシアグループソリューションズはどのような役割を担うのでしょうか。
樋口 物流をはじめとしたサプライチェーン、発注・在庫管理などを含むグループの共通基幹システムに加え、人事会計などのバックオフィス、セキュリティ、クラウドなどの各種インフラといった具合に、コストメリットを出せるグループの横断的な領域のシステムをサポートしています。一方で、顧客接点やブランド構築といった、差別化領域はグループ各社が持つIT組織が個別で対応しています。
ベイシアグループではグループ各社が個性を生かしながら針のように尖った経営をする「ハリネズミ経営」を標榜しています。グループのDXにおいても、各ブランドがそれぞれ尖った個性を磨きながら、グループ全体としての特徴を出そうとしています。
こうした体制のもと、当社では「AIの活用による高度化」「スマートサプライチェーン」「コーポレートシステムデザイン」など、9つの領域に重点的に取り組んでいます。
──業種業態の違う企業群がある中で、グループ横断的な動きをすることには、どのような難しさがあるのでしょうか。
樋口 「言うは易し」ですが、巨大グループであるだけに決して簡単ではありません。わかりやすいのはたとえば物流で、各企業によって配送の形態が大きく異なります。冷蔵・冷凍・常温と温度帯の異なる商品を扱うSMのベイシア。日用雑貨やインテリア、プロ用資材、ペット用品など商品の形状や大きさ、特性が多様なHCのカインズ。フランチャイズでロングテール商品の比率が高いワークマンなど、各社に合わせた物流システムを実現させるのは、一筋縄にはいきません。
──情報システムをめぐっては、前身である流技研が主体となり、2022年に基幹システムを刷新しています。
樋口 昨年はベイシアグループのDXの大きな転換期とも言える1年でした。
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