大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」

河合 拓
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百貨店のEC強化は誤った戦略

アマゾンロゴ
消費者がECで商品を買うのは「低価格」と「品揃え」の2つ。これらはいずれもアマゾンが強化しているものであり、百貨店にはないものである(2021年 ロイター/Mike Segar)

 このように、百貨店というのは、好立地に館を構え、城下町を形成し、人が集うことでビジネスを作っている。例えば、二子玉川の高島屋を見れば面白い。自主編集の、いわゆる伝統的百貨店と場所貸しデベロッパー型専門店街で構成され、その競合としてSCである二子玉川ライズ、ファッションビルがそびえ立つ。見事に日本の館(やかた)戦争の縮図となっている。ここでは、伝統的百貨店平場はいつも閑古鳥がないている。賑わっているのは専門店街か駅直結のSCだ。

 もう一つ、東京駅の大丸百貨店に行けば、1階と地下の食品やスイーツは恐ろしいほどの賑わいがあるが、上階の衣料品売場に行けば閑古鳥がないている。以前、大手アパレルと同社が、米国発の「クリックアンドコレクト」という、商品のバーコードを読み取り、自宅まで配送してくれるソリューションを導入したと聞いて驚いた。そもそも人がいない場所で、商品を買う人もいないのに、なぜ、そんな仕組みを導入するのか不思議でならなかった。その後静かに閉鎖となったが、当たり前だ。

 想像してもらいたい。例えば、北海道の人が福砂屋のカステラやふくやの明太子を欲しいと思い、わざわざ九州の百貨店のホームページにアクセスするだろうか。当然、楽天などで、福砂屋、ふくやのページに直接アクセスし、百貨店の定価販売ではなく楽天のポイントをつけて買うだろう。

百貨店の海外戦略はあやまり

 ある百貨店の役員から「タイにゴルフに行こう」と誘われ、ついでに、タイの伊勢丹を見に行った。中に入ってそのシャビーな状況に驚いた。まるで、日本のGMSの平場だ。しかし、考えてみれば当たり前である。ルイヴィトン、グッチ、ゼニアなどのスーパーブランドは、すでにローカルのショッピングモールに入っている。

  中国の上海にいっても、代表的な百貨店はローカルの久光だ。日本の百貨店など後塵を排した館には有名ブランドは入らない。なぜなら、有名ブランドは、すでにローカルモールに入っているからだ。考えてみれば、米国の百貨店などアジアに一つもない。彼らは百貨店の価値と限界をよく知っている。

  これは海外だけの話ではない。東京では圧倒的な強さを誇る伊勢丹が大阪の梅田に出店した時もすぐに撤退となった。梅田には阪急がいるからだ。すでに、魅力的なテナントや商品は阪急に入っている。逆もまた然りで阪急百貨店も東京で伊勢丹に勝つことはない。だから、百貨店は立地とテナントが命であり、商圏内の人を呼び込む場なのだ。商圏の外で戦っても勝てるはずがないのである

  私は、業績悪化に歯止めがかからない百貨店が、デジタルを使ったオムニチャネルに命運をかけるという発言を聞いて「これは必ず失敗するな」と思っていた。消費者がECで商品を買うのは「低価格」と「品揃え」の二つであるAmazonが業績を伸ばしているのは、その二つを強化しているからだ。

  ところが、百貨店は「百貨」は品数はほとんどないし基本的に定価販売だ。いくらポイントが貯まるといっても、北海道の人が九州の百貨店のポイントなど貯めることはない。百貨店は物理距離を縮めても効果はない。百貨店のおいたち、そして、百貨店が我々消費者に与えている価値を分析すれば、百貨店とは、その周りにある人たちが集い、美味しい食事をして憧れの時計や高級ブランドを眺め、「いつかは」と、夢を膨らませるリアルな場所なのだ。百貨店のデジタル戦略は、リアルな『場』の提供で、これが百貨店の本質であり、百貨店の価値向上のポイントとなる。

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