#17 目指すは業界統一? 八ヶ岳連峰経営でついに関東進出を果たしたアークス・横山社長

北海道新聞:浜中 淳
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成功の第2の理由は“似た高さの山”が並び立つこと

 横山氏の慧眼は、97年6月に解禁された純粋持ち株会社を「使える」といち早く気付いた点にありました。中央集権によって成果の出やすい分野(システム開発、ポイントカード開発など)は持ち株会社、地域ごとに対応すべき分野(商品政策、売り場づくりなど)は事業会社-という形で「課題の分離」を明確にし、相反する概念を両立させたのです。

 成功の第2の理由は、「似た高さの山が連なる」という八ヶ岳連峰の特徴そのものにあります。アークスの好業績は、「似た高さの山」すなわち一定の経営水準を持つ事業会社が並び立ち、個性を発揮し合ってきた成果です。裏返して言うなら、「標高の低い山」(=経営難の企業や経営者の意識の低い企業)の参加は原則お断り-というのがアークスの不文律なのです。

アークス本社の玄関前にあるプレート
アークス本社の玄関前には、グループ企業の名を記したプレートが掲げられている。来年3月には、ここにオータニの名が刻まれる予定だ

 こう書くと「各地の優良企業ばかりが集まっているのなら、業績が良いのも当然」と思われるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。先述したように「中央集権型オペレーション」がなじみにくい食品スーパー業界は、必然的にローカルチェーンの群雄割拠という様相を呈しています。地域の食文化に守られ、地元消費者の支持を得ているローカルチェーンの経営者は、言わば「お山の大将」です。そんな彼らも一目置く実力者・横山氏がトップに鎮座し、重しになっているからこそ、アークスがグループとして機能している。ここが非常に重要な点です。

 連載8回目で紹介したように、横山氏は、ラルズ社長だった90年代前半にディスカウント業態「ビッグハウス」を完成させ、北海道拓殖銀行が経営破綻した不況期に他を圧倒する低価格路線を打ち出して北海道最強のスーパーをつくりあげました。

 横山氏が業界で一目置かれているのは、経営能力の高さに加えて、同じ食品スーパー経営者を「仲間」と呼び、業界全体の繁栄を考えた行動を貫いてきたからでしょう。例えばラルズの社長時代には、本拠地の札幌圏以外は自力で出店せず、地元スーパーが救済を求めてきた時に店舗を買い取る形で進出するパターンに限っていました。帯広や旭川などに自ら乗り込んでいっても十分勝算はあったはずですが、当地で同じ商売を営む仲間に消耗戦を強いることをよしとしなかったのです。

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