1位はダントツ2兆円増!2020年に企業価値を上げた小売業、下げた小売業ランキング

椎名則夫(アナリスト)
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2021年、注目すべき事象とは

  いかがでしたか。

 さて、21年はおそらくポスト・コロナ禍になると思います。しかし、以前にそのまま戻ることはないと思います。特に、リモートワークを試行することで出社ベースの業務の非効率な部分が炙り出されたため、今後リモートワークは定着すると思います。

  また、消費回復のペースも鈍そうです。家計の所得回復には時間がかかると思われますし、金融資産を保有し株高の恩恵があるはずのシルバー層が安心して外出し消費を増やすにはまだ時間がかかりそうです。数年来小売業を底上げしてきたインバウンドもオリンピックの一時的効果を別にすると過大な期待は難しいと思います。

 一方、Eコマース(EC)はまだまだ伸びるはずです。通信とECプラットフォーマーが融合し互いに競争する局面に入り、ECプラットフォームには多くの消費者向けインセンティブが投下されていきそうです。

  したがって多くの小売企業にとってはEC対応(本質的にはサプライチェーンマネジメント全体の適応力)の巧拙が問われることは間違いないと思います。また、規模の利益を十分顕在化できていない業界では、TOBがさらに活発になり、業界の集約が加速すると思います。ここに気候変動対応の努力も問われることになり、従来に比べて企業が追いかけるべきKPIが増えてきそうです。

  このように21年はいままでよりも難しい年になりそうですが、楽しみもそれだけ多いと思います。

  20年のみなさまのご厚情に御礼申し上げるとともに、21年が素晴らしい年になることを心よりお祈り申し上げます。

 

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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