日常化するTOB、島忠の次はどこだ!?狙われやすい小売業とは

2020/12/09 05:55
椎名則夫(アナリスト)

島忠(埼玉県/岡野恭明社長)に対するDCMホールディングス(以下DCM、東京都/石黒靖規社長)とニトリホールディングス(以下ニトリHD、北海道/白井俊之社長)によるTOB(株式公開買い付け)合戦が業界のみならず広く産業全般から注目を集めたが、TOBの件数は近年急増している。今回は「TOBで狙われやすい小売業はどの企業か」を解説し、その備えへの警鐘としたい。

淡々と進む島忠のTOB

 島忠をめぐる買収が粛々と進んでいる。

  DCMが下交渉を踏まえてTOBに踏み切り、その動きを見たニトリHDが後から、島忠株主にとって有利な価格を提示したことはご存知の通りだ。

  ニトリHDに対するメディアの反応には「後出しジャンケンではないか」という指摘もあったが、総じて批判的ではない印象だ。彼らの話題はDCMの対応、ニトリHDの今後の事業展望など純経済的側面に向けられている。コロワイドと大戸屋ホールディングスの応酬と比べれば、実に淡々と進んでいる印象だ。

TOBが日常化 企業価値最大化の三種の神器、出揃う

  これは日本でもTOBが日常化し、定着した証左と言えるだろう。また投資家はコロナ禍において経済利益を優先すべきである、ということを改めて確認したものと考える。

 そして筆者は2021年以降、TOBは件数面、金額面で益々増加すると考える。

  14年のいわゆる伊藤レポート、15年のコーポレートガバナンスコードの策定を契機に、企業経営者に企業価値最大化と株主資本コストへの意識づけが進んできた。そして並行してアクティビスト(いわゆる、物言う株主)やエンゲージメント投資家の活動が活性化してきた。

  しかし、これら投資家の影響力が顕在化するには時間がかかる。仮に彼らが至極真っ当な主張をしても、株主への多数派工作には時間がかかるうえ、現経営陣が対策を取る時間的猶予も大きい。アクティビストの提案が採用されても、その経済効果が出るにはさらに時間を要することになる。

  ところが、ここにきてTOBに寛容な潮流が生まれてきた。買収にともなう経営体制の変革とシナジーを通じて、買収標的企業の潜在価値を解き放つ道筋ができたことになる。しかも、標的企業の株主はその果実をすぐに手にすることができる。

  外部環境も追い風だ。金融機関は低金利下で貸出案件の発掘と手数料収入の確保を強く迫られている。

  20年を境に、「アクティビスト」「エンゲージメント」「TOB」からなる企業価値最大化と資本効率改善のための三種の神器が出揃ったと考えるべきではなだろうか。

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