第98回 百貨店とSC、「インバウンド一色」への懸念とは
前回、米国とは事情が異なるから、日本のショッピングセンター(SC)は「デッドモール」になりにくいことを解説した。その一方で、SCは日本特有のリスクにさらされている。日本のSCを取り巻く環境をみても、2018年にピークアウトした全国SC数はその後、増加に反転する兆しはない。コロナ禍によるリベンジ消費やインバウンド消費により好調を保つ施設はあるもののそれも一部に過ぎない。流通業界でもSCに関する良いニュースを聞くことは少なく、不動産各社も自社の組織名から「商業施設」の文字を消す動きが増えており、今の商業施設の厳しさを表している。今回はこの原因となる「7つのリスク」について解説していく。

リスク1:人口減少
今さら説明するまでもなく、日本の人口は減少の一途である。コロナ禍も手伝い、政府の予想を上回る速度で人はいなくなっている。そのスピードは、毎年、1つの県が消滅するほどの勢いであり、それに伴い消費市場の縮小は避けようもない。
特に地方圏での減少は激しく、新幹線整備が行われれば行われるだけアクセス向上により企業の支店や営業所はなくなり赴任者やその家族はいなくなり、人口の首都圏への集中はますます加速する。
リスク2:高齢化
急速に進む高齢化は消費市場の縮小ばかりでなく、年金生活者の増加に対応した税金や社会保険料などの社会負担も増加し、最近では子育て支援として社会保険料まで値上げがされようとしている。このような環境の中、かつてのキラキラしたSCは残念ながら望むべくもない。
リスク3:少子化
今、晩婚化・非婚化の影響もあり、出生数は驚異的なスピードで減少している。合計特殊出生率も1.20まで下がり、年間270万人が生まれていた団塊の世代に比べ昨年(2023年)生まれた子供は75万人となり、わずか28%まで落ち込んでいる。したがって高度成長期に開発された施設の建て替えはかなり難しいと言える。
リスク4:働き手不足
人口の減少と少子化は人出不足を加速する。今、販売員が揃わないことを理由に出店を断念するテナント
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