盤石!人口減少エリア主戦場なのに成長続けるヨークベニマルの強さの正体!

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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小売チェーンの“王道”

 なぜヨークベニマルの店は強いといわれるのだろうか。

 ヨークベニマルの店舗は、売場面積600~750坪ほどの標準化されたフォーマットで、店舗年齢によって多少の違いはあるものの、似たようなつくりの店が多い。都市部でみられるような、派手な売場演出が凝らされた店はほとんどない。

 価格政策はどうだろうか。ヨークベニマルの店頭に並ぶ商品は、たしかに値ごろ感はあるものの、ほかの競合店と比べて極端に安いわけではない。大髙会長も折に触れて「価格競争にはついていかない」と発言しており、安さを前面に打ち出す戦略には消極的だ。

 では、ヨークベニマルの強さは一体どこにあるのか。その1つが、地域の味を重視する姿勢だ。売場が標準化されているため、ひと目見ただけではわかりづらいが、ヨークベニマルの店舗では地域で好まれていると思われる商品が売場の随所に差し込まれている。今やSMでは一般的となった地場野菜コーナーも圧巻の品揃えだ。

 「現場力」の高さにも注目したい。本特集の調査にあたって、何度もヨークベニマルの店舗に足を運んだが、どの店も開店時から売場には商品が整然と並んでおり、催事の切り替えも迅速に行われていた。こうした従業員のオペレーション精度の高さが現場力であり、優れた教育体制があることがうかがえる。

 ヨークベニマルの強さを語るうえでは、総菜も欠かせない。100%子会社のライフフーズが運営する総菜売場・インストアベーカリーは、お客のニーズに応える魅力的な商品を揃えており、かつ利益の源泉にもなっている。

 価格政策についても、安売り志向ではないものの、売れ筋は抜け目なく価格訴求する絶妙な価格政策がとられていることが本誌の独自調査で明らかになっている。

 このようにヨークベニマルの強さを支えているのは、奇策ではなく、小売チェーンの“王道”ともいえる数々の取り組みであることが、本特集の調査から見えてきた。野越え山越えはるばるお店においで下さるお客さまに誠実の限りを尽くせ──。

 ヨークベニマルでは、企業理念である「野越え山越え」の精神が現場レベルまで落とし込まれている。「店に来ていただいたお客さまに1つでも多くの商品を買ってもらう」という発想に基づいた店づくり、売場づくりこそ、ヨークベニマルが人口減少が急速に進む東北地方を主戦場としながらも成長を続けられる要因といっていい。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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