ファストリ過去最高益予想の裏で… 金融主導によるアパレル業界崩壊の真実

河合 拓
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前回、私が2019~20年にかけて行った5つの予想のうち4つを解説した。今回は5つ目、「金融主導業界再編」について書きたい。金融主導の業界再編と聞いて、ピンと来る人は少ないだろう。この私とて、個人的な事情から金融業界に関わりをもったおかげで、アパレル業界の現実が見えてきた。そこは、まるでイギリスのサザビーズ(イギリスの伝統ある競売会社)にいるような錯覚に陥るがごとく、会社や組織の売買が行われ、また、さらに一歩中に足を踏み込めば、そこは、重病患者が次々と運ばれてくる野戦病院のような状況だった。 
家に帰り、テレビをつけると何もなかったかの如く日常は過ぎてゆく。しかし、私は自分の人生で二度会社が吸収合併された経験を持っている。それは突然やってきて、私たちの生活を一変させる。この最後の予言についていえば、リアルな世界を目の当たりにすれば、その壮大なダイナミズムと資本主義の冷徹さがミックスした不思議な気持ちに私を誘った。「本当に鉄の山は動き出す」 私はそう感じた。

AndreyPopov / iStock
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政府と金融機関による会社救済の実態

 コロナ過で倒産寸前の3大業種といえば、「旅行」「飲食「アパレル」といわれている。メディアでも、この3業種を「コロナ倒産」の典型事例として扱っている。

 しかし、この分析は表面的なものに過ぎない。実は、19年と20年を比較すると、20年の方が倒産件数は減っている。

 まず、アパレルに関していえば、コロナ以前に、消費増税と暖冬という二つのダブルパンチですでに瀕死の状態に陥っていた。このまま放置されれば、多くのアパレル企業が死滅してしまう。それまで「DX(デジタル・トランスフォーメーション)こそアパレル産業を救う」と誰もが信じ、日本のアパレル業界は一部の勝ち組を除き、「デジタル祭り」に興じていた。しかし、そんな小手先のテクニックで産業界が救われるほど状況は甘くない。なぜなら、新型コロナウイルスによって時計の針はスピードを増し、産業界は、「時すでに遅し」という状況になっていたからだ。このままでは、日本はユニクロと無印、外資SPA、と新興D2C企業だけが残り、その他は大ダメージを受け、業界再編が起きる可能性がある。私自身、M&A(合併・買収)の世界に身を投じ、もう一度企業再建の構えをとった理由はそこにある。多くのアパレル企業が苦しんでいるのは、世界的にみて法外な上代をつけている企業だ。そんなことは、今勝っている企業が「激安」であること、日本の衣料品の中心購買層の可処分所得を分析すれば一目瞭然なのだが、そうした本質的な課題から目をそらそうとする。

 今、「安いことは正義」なのである。高い販管費(固定費)に手をつけなければ、いかなるハイテク・デジタルツールを駆使しても競争に勝てない。

 外食企業に関していえば、客がついている人気業態はそれほどコロナの影響は受けていない。外食企業では、味が勝敗の分かれ道になる。一方、産業全体で一様にコロナの影響をダイレクトに受けたのは、旅行業界だ。このように、3業種の業績不振は全く違う意味合いと構造が裏にある。

 皆さんもご存じの通り、上場しているアパレル企業の多くは、この半期は赤字決算だった。また、商社も壊滅的状況だ。コロナ禍にもかかわらず、218月期決算で過去最高益を予想しているファーストリテイリングは、奇跡を通り越し、もはや一時のAppleのような、「神に最も近い」ブランドとなり、他のアパレルが逆立ちしても勝てないほど差をつけている。一昔前は、「私はワールド出身です」といえば、業界でも一目置かれたが、今は、「私はユニクロにいました」というのが履歴書を飾る殺し文句になっている。

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