セール期間延長にEDLP、アプリ活用… 販促の新常態 「分散して集客」の向かう先

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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アプリ越しに「ささやきかける」販促

 USMHと同様の青写真を描くのがライフコーポレーションです。スマホアプリに新たに独自電子マネーの決済機能を組み込み、利用者を増やして将来は one to one マーケティングを目指すといいます。自社マネーの優遇策を強化して、キャッシュレス化と共にアプリ活用を促進させる方針です。

ライフコーポレーションは将来のマーケティング活用を視野にアプリ機能の拡充を進める
ライフコーポレーションは将来のマーケティング活用を視野にアプリ機能の拡充を進める

 アプリを経由して、購買履歴が分かっている個々人にマッチした商品情報を届けるというアプローチは、チラシに特売品を開陳して「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」と誘う方法とは異なります。強いて言えば「あなたはこれが欲しいんでしょう? こんな値段になってますよ。ポイント還元もしますよ。あと、こんなものもいかがですか?」とささやきかける感じでしょうか。こちらのことを理解している分、セリフにすると多少いやらしく聞こえ、長広舌になってしまいます・・・。

 こうした販促は、アマゾン(Amazon.com)はじめオンラインショッピングでは当たり前ですし、リアル店舗も当然ながら将来の手法として検討はしていました。それがコロナ禍をきっかけに、強制されるかのようにシフトしていく様子は、世の中で散見される他のいろいろな変容と同じです。

 アマゾンも、先日実施した「プライムデー」のように、特価の目玉商品を並べる「寄ってらっしゃい」的な販促を全くしないわけではありません。そのプライムデーですが、特価だけでは私は動きません。気になる商品はお気に入りに登録して価格の推移を見守っており、それが安い場合には購入します。しかしプライムデーの巧妙なところは、この期間に購入するとセール品以外でもポイント還元が増えるところで、けっきょくはそれなりに買物をしてしまいました。「寄ってらっしゃい」と同時に、「これだけポイント還元しますよ」とささやいてくるのです。組み合わせの妙技です。「寄ってらっしゃい」か「ささやき」かの二者択一ではなく、チラシとアプリを駆使する新常態が、いよいよSMでも本格化するのだろうと思います。

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