破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#7 小さい企業が大企業に一泡吹かせる戦略とは

2020/09/29 05:55
河合 拓

新型コロナウイルス感染症(コロナ)の拡大の長期化に伴う経済の低迷により、これから事業再生、企業再生は避けられないテーマとなる。そこで私が独自に体得した「企業再建の手法」を解説する本稿もこれで第7回目。前回4つあると言った、贅肉を極力までそぎ落とした企業が取り得る競争戦略について、残る3つの戦略を解説していきたい。

Bulat Silvia / istock
Bulat Silvia / istock

 

小さい企業が大企業に一泡吹かせる戦略

 前回、贅肉を極力までそぎ落とした企業が取り得る競争戦略は、

1まだ未開の地に打って出るか、衣料品以外の領域にMDを拡大するかのいずれか、
2縮小する市場においては、物販以上に消費者の囲い込み(ブランド化)の方が重要
3巨大企業に勝つため、あちこちに手を出すのでなく自社が本当に強い領域に集中する4縮小する市場で売上を上げる最も確実な方法はM&A

 の4つであると言い、最初の1つについて解説した。次いで2〜4についても解説していく。

 2は、大いに検討すべき課題である。私は、不特定多数の人間にモノを売るビジネスを「八百屋ビジネス」と呼んでいる。キュウリが10円安いと隣の駅までゆく主婦のお買い物に例えた言葉だが、成熟した市場では、売上を上げたければ、物販を拡大するのでなく、顧客を囲い込むべきだ。「そんなことは分かっている」と思っている方達に聞きたい。例えば、商社だ。あなたたちは、今も、そして、昔も、サンプルをもってゆき、「競合より10セント安いですよ」と、枚数勝負をしているではないか。

 こういう商社のような企業の特徴は、取引先の数だけで、200も300もあり、取引先別で80%は赤字になっているという実態だ。これに対し、勝っている商社は、取引先と「太い取り組み」を構築し、競合が入れないよう共同出資をし、人員を派遣したりするトップ営業をして垂直統合をしている。一枚2000円のサンプルを積み上げて売上が1000億円もある商社は、「八百屋ビジネス」との典型といってよい。成熟した競争環境では、物販でなく顧客の囲い込みをすべきなのだ。あなたは、ものを売ろうとしているか、それとも、お客様を囲い込み、競争相手では買えないような仕組みを作ろうとしているのか、それをはっきりさせるべきだ。

 3「自社が本当に強い領域に集中する」は、小さい企業が、大企業に一泡吹かせる基本戦略である。そのために必要なのが「商社活用」である。だがそれは、従来のものを運ぶだけで10-20%のマージンを抜く商社のことをいっているのではない。CPFR(バリューチェーン全体が、共同でリスクシェア、プロフィットシェアをする考え方)型の垂直統合を商社と取り組むことだ。そして、その目的は、コスト削減ではなく、アパレル企業の経営資源を自社の企画に振り向け、自社にしかなしえない価値を生み出すことに尽力を尽くすことだ。組織というのは、一度に複数の課題を与えれば混乱しか生まれない。

 経営者の仕事は、最も重要な課題に絞り込み、勇気を持ってその他の課題を捨てること、ここを正確に言えばアウトソースすることなのである。

 一度に、100も200もある課題を自前でやろうと思えば全滅は免れない。課題解決はシングル・イシューが原則である。私が8年前に「ブランドで競争する技術」を書いたのは、こうしたオペレーションのオプティマイゼーション(最適化、標準化)の先には、企画力による競争が待っており、それは、どれだけの「顧客」を囲い込むかが大事であるということを産業界に伝えるためだった。企画力の向上に唯一解はない。それぞれの企業が、それぞれの考え方で独自性をだすべきなのである。だから、その真逆にある標準化やシステム化はアウトソースし、「接客、店舗空間、商品」の3つを競合と如何に差別化させるかを考える。

 

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