コロナショックに打ち勝つアパレルビジネスの戦略を戦略コンサルの私が提言しよう

河合 拓
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 在宅で仕事ができないのは固定概念

 コンサルファームのトップとして、私は在宅ワークを従業員に指示している。だが、用事があって昔住んでいた横浜に朝、クルマで出かけた際、恐ろしい光景をみた。それは、田園都市線の早朝出勤時の混雑ぶりで、狂気と言えるほどの満員状態だったのだ。つい最近のことである。欧米では、外出禁止令がでたというのに一体日本は何をやっているのかと憤りを感じたほどだった。お勤めをされている方からしてみれば恐怖を感じながらも、出社しなければ雇用が、昇進が、昇級といった不安に苛まれているのかもしれない。

  今、日本経済はリーマンショック以来といわれるほどの最悪の状況で、とうとう日経平均は17000円を割った(318日時点)。また、あのトヨタのPBR(株価純資産倍率)が1倍を割った。株式に詳しくない読者のために解説すると、PBR1を割るというのは、株価が下がり、時価総額(株価*発行済株式総数)が純資産(解散価値)を下回る状態のことを言う。つまり、この株価水準なら、「営業活動を止めて解散した方がよい」ということだ。

 とはいえ、こうした状況は何も「世界経済の崩壊の予兆」なのではなく、いずれワクチンが開発されれば回復する一時的なものだ。私たちがやるべきことは、速やかなる復興のため可能な限り経済と人類の健康の打撃を最小化させておくことだ。そして、今すぐにでも、政府と企業は、あの早朝の田園都市線の満員電車に対して具体的な手を打つべきだ。

  私が企業に問いたいのは、本当に物理的に体をオフィスビルに移動しなければ仕事はできないのかということだ。私の提言はホワイトカラーに寄っていることは承知で言わせて頂いているのだが、ホワイトカラーの仕事など、自宅のパソコンを使えば必ずできる。実際、私達のチームは、提案書は自宅のPCPowerPointで作成しミーティングはSkypeWebEXだ。これらのソフトウエアは無料で使えるし、PCが持ち帰れないというなら、スマホでやればよい。

  「できない」というのは、会社も本人もやる気がないのである。もちろん、私は物理的に顔を合わせて語り合う会議のメリットを否定しているのではない。しかし、形式論にこだわって、自宅にいれば作業をしても「仕事は休み」で、会社に出社していれば、朝から晩まで新聞を読み、お昼は近くの喫茶店で漫画を読んでも「仕事をした」と言うことになるのだろうか。

  特に、世界的にみても生産性が低い日本のホワイトカラーは、成果で仕事を計ることをしていない。本来、ホワイトカラーの仕事というのは、上司が目的と期限、そして、品質レベルを最初に定義して部下に委託させる。もともと、日本企業の「上司」の多くはマネジメントのいろはを学ばず、数字を上げられた人が上にいくという悪癖がある。数字をつくれることと部下をマネジメントする力は全く違う。

  「上司」の多くは「挨拶は元気にやれ」とか、「おもいきってやれ、責任は持つから」など、具体的な戦略や目的を示さず、根性論で部下に劇をとばせば自分の仕事は終わっていると思っている人が多い。

 本来上司は、毎週、その週でチームがすべきことを決め、プロセスでなく成果目標を設定し、チーム編成をおこなって、それぞれにいつまでに何をすべきかというミッションを与える。ここまでやって上司の仕事なのだ。場所など関係ない。そして、部下は納期通りに成果を出せばよい。

 

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