「食べづらいサンドイッチ」を食べてわかった!  スーパーの総菜にあと1つだけ足りないこと

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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食べてわかった!ヒットの理由

 

食べづらいサンドイッチ
食べると具材がこぼれてしまう。確かに食べにくいが、しかし美味しいのだ

 いざ実食。予想していたとおり、やはり食べにくい。押しつぶしても野菜が溢れてきてしまうので、とにかく口をあんぐりと開けて突っ込んでいくしかない。しかしその煩わしさは、噛みしめるごとに口の中に広がる野菜のみずみずしさによってかき消されていく。それだけだと淡白になってしまうところ、ハムの塩気と辛子ソースのピリッとした刺激が加わることで、意外と食べ飽きることがない。これで1切れ180円であれば、コストパフォーマンスはかなり高いと感じた。

 味と値段以外にも、食べづらいサンドイッチがヒットした理由はいくつか考えられる。

 まずは商品の見た目。「インスタ映え」はすでに死語になりつつあるようだが、実際にインスタグラムで検索をかけてみると、食べづらいサンドイッチの写真がいくつもアップされている。サンドイッチやハンバーガー、ケーキなどを切り分けた際の断面に“萌える”という「断面図マニア」なる勢力も存在し、そうした人々の間でも話題となっているようだ。

 さらに、「ギルトフリー」である点も1つのポイントだろう。ギルトフリーとは、「罪悪感を持たずに食べられる、かつ食欲をしっかりと満たせる商品」を指すもの。昨今、一部の食品スーパーでも「ギルトフリー」を謳った弁当などが販売されている。そこへいくと、野菜のボリュームたっぷりの「食べづらいサンドイッチ」はまさにギルトフリー。健康志向の高まりとともに、性別・年齢を問わずに野菜の摂取量を意識する人も多く、そういった需要も取り込んでいると考えられる。

 

スーパーの総菜にもネーミングセンスが問われる!

チキン南蛮
スーパーの総菜にもネーミングセンスの良さが問われる。写真は同じくウメコウジで売られていた「チキン南蛮(間違いなし)」

 しかし、ヒットの根源はネーミングにあるとも感じた。たとえばこの商品、「たっぷり野菜のサンドイッチ」という平々凡々な商品名であったら、ここまで話題を集めることはなかったのではないか。「食べづらい」というネガティブな要素をあえて前面に出すことでお客の目を引き、「確かに食べづらいけど、見た目もいいし美味しい」という、この商品ならではの”食体験”を見事に表現している。

 考えてみれば、外食やコンビニに比べると、食品スーパーが独自開発した商品が、メディアでも報じられるほど大きな話題を集める機会は決して多くない。毎週のように新商品が投入されているのにもかかわらず、だ。もちろん、味のよさは大前提。見た目も重要だ。ここまでは多くの食品スーパーもこだわっている。しかし、そこに「ネーミングセンス」のよさが加わると、より爆発力のある商品が生まれるのではないだろうか。

 南国・宮崎の暖かな日差しのもと、サンドイッチの具材をボロボロとこぼしながら、そんなことを考えた。

 

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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