NRF2022で語られた米国小売「DXのその次」とは?
1月16日から3日間ニューヨーク市内で開催された「NRF2022ビッグショー」は、オミクロン株感染ピークだったこともあり、参加者は2019年比で4割程度の1万5000人以下だった様子で、講演のキャンセルも目立った。だが初日の基調講演は大ホールが8割方埋まる盛況ぶりで、アフターコロナの方向性を見極めたいという意気込みが感じられた。本稿ではショーで語られたデジタル・トランスフォーメーション(DX)の次のフェーズを示唆する動きを紹介したい。
ウルトラファースト配送 ジョーカー3つの成功要因

コロナ禍によって米国ネットスーパー業界はラストマイル配送時間を最短1~2時間に短縮した。しかしヨーロッパで先行して急成長した15分以内で食品・日用品を配送するウルトラファースト配送※1スタートアップ企業が、21年春からニューヨークやボストンなど人口密度の高い都市に次々と進出している。その市場規模は米国だけでも21年末で200億~250億ドルと推計※2されている。

その1社のジョーカー(JOKR)社グローバルサプライチェーンVPイェン・キリマン氏は最終日に、同社の需要予測、在庫・価格・人事・店舗空間の適正化戦略を提供するリレックスソリューションズ(Relex Solutions)社最高収益責任者フランク・ロード氏と対談した。
ジョーカーのビジネスには①インスタント(瞬時の)配送、②高品質な商品セレクション、③地元のスーパーと同じ価格、④22年末までにカーボンニュートラルとなる目標、という4つの柱がある。21年3月にメキシコシティ、コロンビア共和国ボゴダに進出後、ブラジル・サンパウロ、ニューヨーク、ボストン、チリ・リマなどでも事業を開始、わずか10カ月間に100以上の地域、6500万人にリーチしている。
ジョーカーの成功要因は、以下の3点である。
❶パーソナライズした商品展開:地域別の好みだけでなく、1日の間でも午前中と午後、夜など時間や曜日によって品揃えを変化させる。また競合他社との差別化として生鮮食品を扱い、より顧客中心主義の品揃えとなっている。
❷インスタント配送:アルゴリズムを使い15分以内、最長でも30分以内で配送する。このためターゲット商圏内では数十のダークストア網を構築し、短時間・高頻度な配送によって高生産性のサプライチェーンを構築する。またオーダー処理も順番や配送ルートをAIで最適化する。
❸オペレーション:同社のダークストアは
DCS Report の新着記事
-
2025/06/18
若年層の取り込みに成功! イオンリテールの「住居余暇改革」の全貌 -
2025/06/17
愛知のローカルスーパー、ヤマナカが「高質業態」を再定義 そのねらいと成果は -
2025/06/17
意外にも台北初出店!ロピア台湾6店舗目「ららぽーと南港店」の売場をレポート -
2025/06/03
ポーランドの最強コンビニ「ジャプカ」が急成長を続ける理由 -
2025/06/02
スーパー2店舗を相次ぎ出店! イオンリテールの新潟ドミナント新戦略 -
2025/06/02
クスリのアオキHD、1000店舗の節目で生鮮の「完全直営」に挑戦!
この連載の一覧はこちら [289記事]

関連記事ランキング
- 2025-06-17愛知のローカルスーパー、ヤマナカが「高質業態」を再定義 そのねらいと成果は
- 2025-07-03「AI活用」を武器に海外セブン-イレブンの変革も支える小売業の立役者
- 2025-06-13米中西部の注目リージョナルスーパー「ハイヴィー」に今、注目すべき理由
- 2025-06-20無人店舗が性善説で成り立つ!? 中西部に見た米国小売の“別世界”
- 2025-06-02クスリのアオキHD、1000店舗の節目で生鮮の「完全直営」に挑戦!
- 2023-04-048期ぶり黒字転換、経営破綻からビジョンメガネが復活できた理由
- 2025-06-17意外にも台北初出店!ロピア台湾6店舗目「ららぽーと南港店」の売場をレポート
- 2025-06-18若年層の取り込みに成功! イオンリテールの「住居余暇改革」の全貌
- 2025-06-09既存店好調、EC事業はついに黒字化へ…… ウォルマートの最新戦略を解説
- 2025-06-10売上高“ウォルマート超え”に現実味 BtoB事業中心に増大するアマゾン経済圏
関連キーワードの記事を探す
EC、ディスカウンターが勇躍! 米国小売業販売額ランキングを発表&分析
既存店好調、EC事業はついに黒字化へ…… ウォルマートの最新戦略を解説
業績冴えない米ターゲット、不調を招く「陳腐化」と「顧客離れ」とは