ESG経営が「リスクまみれのD2C化」を推進する理由

河合 拓
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ポイントは「返品在庫の拡販機能」 中間流通の価値を考えよ

D2Cにより、中抜きされるアパレル業務は3つの管理機能となる。それは「ブランド管理」と「在庫管理」、および、「顧客データ管理」だ。しかし、D2C事業をする中で工場が持つべき最も重要な管理が「在庫管理」なのだ。

工場のKPI(重要業績指標)は稼働率で、生産活動を休転させればCMT (工場の工賃)が跳ね上がる。バイオーダー生産をすればよいではないかというが、流れ作業とセル型バイオーダー生産は、工場をゼロから作り直すほど工程の再設計と設備投資が必要だし収益管理も全く別次元の手法が必要となる。

工場側からすれば、「当然、出荷した商品は買取してもらう」と考えているようだが、ECモールは委託販売が一般的だ。そこで、よく聞いてみると、「在庫買取機能」をアパレルに、「返品在庫の拡販機能」を商社にもたせ、中間流通を使っている。ようは、D2Cといっても、従来のビジネスモデルと同じで、違いはEC販売しているだけであることが多い

シーインのサイト

私は正真正銘、越境D2Cである中国Shein(シーイン)モデルを日本でやればよいと考えている。幸い、円安基調で輸出にとって追い風だし、この国の産業政策では金利も当面上がりそうもなさそうだ。

さて、このように、どのようなうまい方法でもメリットとデメリットがある。D2Cと (正しく実行すれば) 在庫リスクが待ち受けているように思くどいようだが、ビジネスモデル論からでなく、消費者のニーズから事業を捉えないと、消費者にとって不要なものに消費は発生しない。街に出て、消費者を見、自分たちの生み出した商品は、誰に対してどういう価値を与えているのかという本質的な問いに答える努力をすべきだ。ビジネスモデルというのは、それを体現させる仕組みなのだ。仕組みだけ先に作り上げても何も変わらない

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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