「SMの基礎力」を向上させ半径1kmのシェアアップに全力投球=ライフ 岩崎 高治 社長

聞き手:下田健司
構成:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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第五次中計最終年度3つの戦略

──さて、17年度は第五次中計最後の年となります。どのようなことに取り組んでいきますか。

岩崎 最終年度ですので、今からまったく新しいことに取り組むつもりはありません。第五次中計で掲げたことをしっかりやり遂げるのみです。

 具体的な戦略としては3つあって、まず1つめはSMの基礎力を上げるということです。人手不足の問題もあって、朝の開店時や夕方のピーク時に商品がしっかりと並んでいなかったり、あるいはお客さまの需要にマッチした品揃えになっていなかったりするケースが依然としてあるのも事実です。基本に立ち返り、まずは魅力ある売場をしっかりと構築するということに取り組んでいきます。

 2つめはカード戦略の強化です。まず、18年3月末までに旧ポイントカードをすべて「ラクカ」に切り替える計画を掲げており、それを滞りなく進めていきます。また、自社発行のクレジットカード「LCカード」については利便性やメリットをお客さまに向けてさらにアピールしていき、会員数を30万人にまで広げたいと考えています。

 そして3つめは、「3つの風土改革」でも「多様な人財を活かす会社」を掲げているように、人材戦略をさらに強化します。女性やパート・アルバイト従業員を含め、全員が自分の能力を最大限に発揮し活躍できるようにしていきます。政府も「働き方改革」を推進していますし、われわれも制度変更などを進めて労働環境の整備にさらに力を入れていきます。

──3つめの労働環境の整備については、具体的にどのような取り組みを進めていきますか。

岩崎 まずは業務のムダをなくし、インプットとアウトプットの時間の比率を変えていくことが重要です。

 その一環として、本社で開かれる会議の見直しを進めているところです。たとえば、店舗や売場の向上につながらないムダな会議は行わないようにしています。また、会議に使う資料は事前に配布しておき、会議中の資料説明を最小限にすることで時間短縮を図っています。会議だけでなく、労働時間についても見直していて、早朝や夜9時以降の勤務は原則として認めていません。

 こうした取り組みはすでに17年1月からスタートしていますが、社員の反応も上々です。

──「多様な人財を活かす」うえで、女性の活躍推進についてはどう取り組んでいきますか。

岩崎 女性の活躍推進については、およそ5年前に外部のコンサルティング会社も交えてプロジェクトチームを立ち上げました。当初は女性社員のなかで管理職を増やしていくという方向性で取り組み、当時39人だった女性管理職を、今では100人近くにまで増やすことができました。女性が意思決定の場に加わることで、たとえば店のレイアウトや内装デザイン、品揃えなどにおいて、女性ならではの考えを反映した取り組みが見られるようになりました。

 現在は社員のみならず、女性が大半を占めるパート・アルバイト従業員の活躍推進についても積極的に取り組んでいます。今後、人事制度や勤務制度を適宜変更しながら、活躍の場を広げていきます。

300店舗体制にメド 小型店出店も進める

──今後の出店戦略について教えてください。

岩崎 第五次中計では、毎年10店舗の新規出店を目標として掲げました。欲を言えばもう少し出店したいところですが、出店用地の獲得をめぐる競争が激化しているほか、賃料や建築コストが高騰していますし、人手不足の問題もあります。そうした状況下では、毎年10店舗程度という出店スピードが現実的な巡航速度だと考えています。すでに再来年度あたりまでは出店する物件がほぼ決まっていて、首都圏と近畿圏で合計300店舗体制が見えてきました。

 また、首都圏においては物流網とPCの再構築にもここ数年力を入れてきました。17年6月には、神奈川県川崎市に倉庫面積約1万2000坪の「川崎総合物流センター」を開設します。国内でも最大規模の物流センターができることで、首都圏で200店舗までは対応できるようになります。

──昨今、小型店もいくつか出店しています。採算モデルは確立できているのでしょうか。

東京都大田区「鵜の木店」
小型店の出店も進めていく(写真は東京都大田区の「鵜の木店」)

岩崎 「笹塚店」(東京都渋谷区)や「吉祥寺駅南店」(東京都武蔵野市)など、150坪程度の小型店はこれまでも出店しており、各店舗ともしっかりと収益を確保しています。

 そして、首都圏ではPCの再構築が完了したことにより、150坪以下の規模の小型店でも問題なく運営できる体制が整いました。物件さえ見つかれば、そうした小型店も出店していく考えです。

──「ビオラル」については、出店の拡大などは検討していますか。

岩崎 しばらくは既存の「ビオラル靭店」の運営に集中する考えです。靭店は開業後、業績が計画を下回るなどやや苦戦していましたが、売場や品揃えの面でテコ入れを図り、売上もある程度上向いてきました。1年目の売上高は6億円程度でしたが、2年目は7億円超の売上高が期待できます。

 ナチュラル&オーガニックの市場がマスの存在になることは今後もないでしょう。ただ、ビオラルの運営を通じてわかったのは、そうした商品の需要は確実に存在するということです。健康志向の強い人や、子供に安全なものを食べさせたいと考える人は着実に増えています。そうしたなかで、ビオラルの存在意義は小さくないと考えています。

──今後店舗を展開していくうえで、めざすSM像のようなものはありますか。

岩崎 やはり、「買物を楽しめる」という要素は必要不可欠だと思います。「モノ消費からコト消費への転換」などといわれていますが、モノだけであればインターネットで十分という時代です。そうしたなかでリアル店舗は、買物が楽しいと思ってもらえるような雰囲気や品揃えを追求することが大きなカギとなります。

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構成

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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