ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営11 ポストコロナはセールが不要になる
“アウトレット”なのにさらにセールをする不思議
2000年、まだ黎明期だったアウトレットモールの開業を担当した筆者は、夏のセールを計画していなかった。
何故ならアウトレットモールは、アウトレットストアの集積体であり、B級品、サンプル品、季外品、キャリー品、キズ物などを処分する機能であり常時低廉な価格で提供することから、「セールはアウトレットモールというSCのコンセプトに反する」と理解していたからだ。
ところが6月に入ると店長達から「セールはやらないのか?」と半ば突き上げのようなかたちでセールの実施を迫られた。その時の雰囲気は今でも思い出すが、セールに向かって浮足立つ店長達の感情がヒシヒシと伝わってきた。
当時、アウトレットモールが黎明期だったことから店長達の多くはプロパー店から異動(赴任)してきた方が多かった。だから、これまで夏と冬のセールが当然のように働いてきた人たちばかりだったのだ。
そんな勢いに押され、予定しなかった「アウトレットセール」なるものを挙行することになるのだが、急ごしらえだったため大失敗に終わる。
その経験もあってアウトレットモールにおけるセール手法も徐々にレベルを上げ、プロパーセールとの棲み分けやプロパー商品の在庫状態も睨みつつ行い、アウトレットセールのパワーを付けていくのだが、その時も決して納得感を持っていたわけでは無かった。
実際、セールの損益はどうなのか?
セールで大きく売り上げを伸ばすSCは多い。しかし、その損益を実際に計算したことがあるSCはどれほどあるのだろうか。
セールを開催するためにはお客さまに事前の告知はもちろんのこと、テナントへもセールの実施時期や方法などを周知し、SCの営業担当は、セールに合わせた商品供給を店長や本部へ依頼する。販促担当もホームページやSNS、チラシ、雑誌、場合によってはテレビCMまで放映して周知を図る。現場もセール用の装飾を施し、統一のセールPOPを制作・配布する。セール当日も臨時警備のための誘導員の増強やセキュリティ体制を敷く。
この時間コストと金銭コスト、合計するといくらになるか分からないが、SCで導入されている最低保証付き売上歩合制(固定+歩合)賃料の上振れ分は、果たしてこのコストを上回る収入となっているのだろうか。SCではセール売上の話は聞くが収支の話を聞いたことがほとんど無い。セール期間の損益をぜひ計算してみて欲しい。