小売業サラリーマン太閤記3 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さん、ユーストアをつくる

2020/07/17 05:55
千田直哉

 1つは店格の問題である。当時は「小売業の王様は百貨店」と言われた時代。次に来るのが、その廉価版ともいえるGMSだ。ユニーは名古屋駅前の一等地に本部を構える地元の名門。一方、食品スーパーの位置づけは決して高いものではなく、女性社員に「ユーストアに来てくれよ」と頼むと急に黙ってしまい、うつむかれてしまう。結局、1対1の勧誘策は不発に終わり、ユニーから女性社員は1人も来てくれなかった。

 2つは合併企業であることの問題だ。「ユーストア気に入らない企業の出身者をユニーから体よく追い出すための受け皿企業」という風評が社内にはびこり、積極的に転籍の手を挙げる従業員はいなかった。

 追い討ちをかけるように、産声を上げたばかりのユーストアに大ピンチが訪れる。

 ユーストアを立ち上げた理由の1つには、「大型GMSを出店するに足る用地はなかなか確保できないが、450坪程度の“ミニGMS”を出店する土地ならいくらでもある」というユニーの店舗開発部隊の報告がベースあった。

 しかし、実際に蓋を開け、開発部隊が持つ不動産物件を精査してみると使えるものは、なんと1つもなかった。大半は不動産会社が持ち込んだ出店とは関係のないものばかりだったのだ。

 「資料を机の上に積んどるやつは絶対に仕事をしていない」とこの時、家田さんは心に刻んだ。

 それでも、船はすでに港を出ている。カネもない。

 さて、どうしようと苦肉の策として生まれてきたコンセプトが「夜逃げしやすい店舗」だ。

「『夜逃げがしやすい』というのは荷物が少ないこと。投資が軽いという意味。接続している道は暗いこと。明るいところは夜逃げしたらばれちゃうから。そして立小便できるところ。街中でやったら捕まりますから、そのくらい辺鄙なところということ――」。

 そんな条件を突き詰めていくと、周囲にまったく何もないド田舎(=ルーラル)という立地にたどり着いた。

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