小売業サラリーマン太閤記3 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さん、ユーストアをつくる

2020/07/17 05:55
千田直哉

「ハエ1匹100円」ルールが繁盛に繋がる

 売上、利益は順調だったので、社内の従業員に対して、きつい話をすることはそれほど多くなかったが、その分、とくに店舗や売場のクリンリネスについては厳しい態度で臨んだ。

 ただそんなときもユーモアあるやり方なのが家田さん流である。

 ユーストアには「ハエ1匹100円」というルールがあった。店内にハエが飛んでいるのを家田さんが見つけたら、罰金100円を家田さんに支払わなければならないというものだ。

 今の時代なら“パワハラ”そのものと言っていいが、当時は家田さんを「おやじさん」と慕う従業員が「負けてなるものか」とゲーム感覚でハエ退治をはじめとするクリンリネスに没頭した。それが、売場に活気をもたらし、繁盛につながり、好循環をもたらす。

 もうひとつ。ユーストアでは家田さんの社長在任中は、POSを導入せずに手打ちのレジを使っていた。導入しなかった理由は、「商売がみみっちくなる」から。その結果、何が売れているのかを一番知るのはパート社員のレジ担当者ということになり、彼女たちの持つ情報を仕入れにも生かした。

 家田さんのユーストアは快進撃を繰り返し、平成元年(1989年)、名古屋証券取引所第2部に上場する。

 1991年時点の店舗数は24店舗。売上高は737億円だから1店舗当たりの平均売上高は実に30億円超。経常利益は49億円、売上高経常利益率6.6%…。「大いなる中小企業」を目指したユーストアは、その通りの成長を見せた。

 「こんなにぼろい商売があるかや」と家田さんは、ほくそ笑み、超優良企業を創業した名経営者として業界内にその名を轟かせた。

 当時の家田さんは、マスコミから「ユーストアはなぜうまくいっていると思いますか?」と尋ねられ、「大体、親会社と反対をやっていればうまくいく」と笑いながら答えていたものだ。

 確かにその頃は、そんなことを言っても、まだ冗談のネタのひとつとして笑っていられた。

 しかし、親会社ユニーには恐ろしいほど暗く濃い影が忍び寄っていた。

 

【余録】

 家田さんは、この時代にも数々の名言を残しているので記しておきたい。
 ・POSデータ3日もすればただの紙
 ・パートさん3日もすればプロフェッショナル
 ・休みを増やして利益を上げる
 ・社員の定着率こそ企業のロイヤリティ
 ・経費予算はゼロが正しい
 ・人が余ると業績悪化し、少ないと向上する
 ・会社とは潰れるもの
 ・新しいモノを新しいうちに売ることが鮮度管理




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