アパレル商社復活の道-3 アパレル市場は4つに分かれる!商社復活「最後の戦略」とは!?

2020/07/28 05:55
河合 拓

デジタル技術を使った「商社3.0」とは?

  そして、234が他産業のように合従連衡し、お互いに共通オペレーションの共有化を進めながら生産性を高め、差別化領域をわけて特徴をだしながら巨大企業に戦いを挑む市場が形成されそうだ。そのように考えれば、従来の、安く買って高く売る商社ビジネスの「次」ともいえる商社の戦略は明確になる。

 それは、「小粒でもピリリと辛い」強みを持つ中堅企業の大連合を組むためのプラットフォームともいえる、「データ・ハブ」となることだ。商社は、ヒト(経営者派遣)、カネ(M&A)、情報(デジタル投資)、そして、モノ(伝統的トレード)を複合的に組み合わせ、垂直統合したアパレルの「事業価値向上」を支援する業務に移行すべきである。実際に、いくつかの大手商社は、想定競合先を「戦略コンサルティング会社」と位置づけ、垂直統合した小売企業の企業価値を上げ、事業拡大させながら連結グループ売上を上げるなどをすすめている。商社による小売企業の買収が進んでいるのはこうしたことが理由なのだ。サンプルを持ち込み、1セントでも安いFOBの商品を積み上げ、売上を作ってきた事業を商社1.0、ここにM&Aを組み合わせ、垂直統合しながらトレードを誘引、あるいは、経営者派遣し人材補強する事業を商社2.0と呼ぶなら、そこに商社がデジタル投資を行い、日本のアパレル産業のマジョリティをしめている中堅企業のまとめ役としてクラウドビジネスを展開するビジネスを「商社3.0」と呼ぶ。

 私のこうした見解に異を唱える方が幾人もいることは分かっているし、なにより現実と理想の狭間でもがき苦しんでいるど真ん中の当事者は私自身である。しかし、ユニクロや大手企業のニュースばかりを解説しても、それはアパレル産業の一部でしかない。私は、元商社マンとして、私自身を育ててくれた日本のアパレル産業全体のことを考えた提言をし、また、企業改革の支援活動をしているわけだ。 

 私がいう「マルチプラットフォーム」というのは、商社を中心とした大連合が複数できあがるという意味である。事業を行う最も広大、かつ根源的なビジネス・プラットフォームはGAFAと呼ばれる米国企業にとられ、これをひっくり返す力は今の日本企業にはない。従って、こうした、ビジネス・プラットフォームの上に複数の「二階層プラットフォーム」ともいうべき商社を中心としたプラットフォームをつくるべきなのだ。しかし、残念ながら、私の知る限りこのような動きは、むしろ大手アパレル企業の方が先行しているように見える。「商社マンよ、みなさんの元々持っている虎の目、ライオンの牙はどこにいったのか」といいたい。 

 私の分析によれば、アパレルビジネスのバリューチェーンは、単純化すれば6つのパターンに分類できる。この6パターンを基本軸とし、標準形を完成させ商社とアパレルを垂直統合させるための業務フローの約束事(プロトコル)として以下を提唱したい。
①アパレルにサンプリングに3D CAD使用してもらい、複写専用伝票をEDI決済とする
②生産の業務フローは突発的な事情のみを例外とし「計画生産と工場の安定稼働」を前提としたマーチャンダイジングに変更し、調達業務のほとんどを自動化する
③トレンド品は売り切り御免とし、MDミックスの割合をベーシック衣料を増やし、作り増しをする。また、会計制度は商品の「価値の残存期間」と商品評価減、滅却ルールを同期化させ、仕入れた商品は全て売り切る仕組みをつくる。
④消費者のタンス在庫の買取事業に参入し、思い切って新規仕入は半分程度に絞る。ブランド自身で自らの商品を大事に再販する二次流通市場をつくる。

 これが、私が考える「サステイナブル経営」でもある。おわかりかと思うが、上記の4つが実現すれば、ムダな在庫は減り、重複した業務は効率化され、人は高い生産性の上に仕事を行えるようになる。理想的といわれるかもしれないが、商社の売上至上主義は解説したように成熟経済において存在価値を失わせるだけなのだ。

 商社というのは、極論をいえば「電話」と「人」しかない業態で、そもそもいかなるビジネスでもやれる柔軟性を持っていた。

 アパレル業界は、構造不況に陥っており、コロナショックで投資もできない状況になるほど複雑骨折をしている。商社とて、このご時世にここまで大胆な自己改革を成し遂げられないという向きもあるだろう。しかし、このままいけば米国の事例でもあるように、ドミノ倒しのように小売り、アパレル、商社、日本向けの工場という順で企業の経営破綻が起きる気がしてならないのだ。こういう時代だからこそ、大胆な産業転換を行う強いヴィジョンが必要なのではないか。

 今、商社のアパレル担当者は「入社した時から商社不要論をいわれ、勝った経験が無いため自信をなくしている」そうだ。企業は業績が悪くなると、社内政治の戦いや出世のための椅子取りゲームが始まるという。部下は社内と上司を見ながら仕事をし、いつしか顧客視点を失い、リスクはないが「我が道ゆく」方向を選ぶようになり、大胆な戦略は「リスクが大きい」という理由で切り捨てられ徐々に弱体化してゆくのである。

 読者の中には、リテイル(小売)をテーマとするオンラインニュースサイトの論考に、度々商社の話が出てくることに違和感を感じている方もいらっしゃると思う。しかし、産業というのは、等しく国の発展段階において繊維事業から始まり、やがて様々な産業に発展してゆくのだ。日本も先の戦争前から繊維産業で経済を発展させ、戦後の高度成長期においても繊維事業が牽引していった。私は、世界でも類をみない日本の経済復興のスピードと、商社という日本独特の業態が果たしてきた役割は無関係ではないと見ているし、その後、我々一般消費者が知らないところで商社の川下シフト(小売業界への参入)は益々加速しているのである。

 私が、世界中で苦境に陥っているアパレル「産業」の再生、再建に商社の果たす役割に期待するゆえんである。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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